見落としがちな随時改定(月額変更)

社会保険手続きの中でも、パターンが多く、見落としてしまったり、手続きが漏れがちなのが月変(随時改定)です。

前任からの引継ぎのタイミングや、年金調査のタイミングで手続き漏れが発覚した経験がある方も多いのではないでしょうか?

以前「(初めての人事労務)随時改定(月変)、ここに注意!」でもご紹介しましたが、今回は、そんな月変の見落としがちなケースについて、ご紹介していきたいと思います。

<ケース1>通勤手当の変更(ガソリン代の変更)

住所変更などで通勤手当が変更したら、固定的賃金の変動となるのはわかりやすいと思いますが、マイカー通勤で「ガソリン単価×日数」で通勤手当を支払われている場合、ガソリン単価が変更となれば、固定的賃金の変動に該当します。
したがって、毎月ガソリン単価が変動すれば、毎月固定的賃金が変動し、毎月月変チェックを行う必要がありますので注意が必要です。

<ケース2>通勤手当の変更(月途中での変更)

月中に住所変更があり、月中から通勤手当が変更することも多々あるかと思います。その場合、月中に変更した月を固定的賃金の変動月とみなすのでしょうか?

(例)3月15日に住所変更し、通勤手当が1万円から2万円に変更、3月は日割りで15,000円、4月は満額20,000円を支給

正しくは、本来支給されるべき1月分の金額が支給された月が固定的賃金の変動月となりますので、この場合3月ではなく、満額支給された4月が起算月となり、7月変に該当するかどうかをチェックすることとなります。

3月を起算月とした場合、本来あるべきよりも低い標準報酬月額になりかねませんので、注意が必要です。

<ケース3>給与体系の変更(残業代あり→なしへの変更)

例えば、時給から月給へ賃金体系を変更した場合は、手続き担当としても月変対象となるかどうかチェックしなければならない、というアンテナが張っていると思いますが、月給のままでも、一般社員から管理監督者になり、給与体系が残業代が支給ありから支給無しへ変更した場合も、賃金体系の変更に該当するため、月変対象となります。

<ケース4>現物給与の価額の変更(社宅の費用の変更)

食事や住宅の現物給与の価額は、毎年4月に見直されていますが、この現物給与の価額が変更となれば、固定的賃金の変動に該当します。

毎月の給与計算では、手当として支給しているものではないため、変動があっても見落としてしまいがちなポイントとなります。

また住宅の現物給与の価額は社宅の広さによって計算するため、転勤などにより社宅が変更となれば、固定的賃金の変動の可能性がありますので、注意が必要です。

<ケース5>非固定的賃金の新設、廃止

毎月変動するインセンティブなどの非固定的賃金が新しく新設、もしくは廃止された場合、一見、非固定的賃金の変動なので、月変の対象から外してしまいそうになりますが、新たな手当の新設・廃止は、それが非固定的賃金であっても賃金体系の変更となります。

起算月は非固定的賃金の支払の有無に係わらず、非固定的賃金が新設された月で、以後の継続した3か月間のいずれかの月において、当該非固定的賃金の支給実績があれば、月変対象となります。

また、非固定的賃金の新設以後の継続した3か月間に受けた報酬のいずれにも当該非固定的賃金の支給実績が生じていなければ、報酬の変動要因としてみなすことができないため、月変対象とはなりません。その場合には当該非固定的賃金の支給実績が生じた月を起算月とすることもありません。 

<ケース6>年間所定労働時間数の変更

残業単価を算出する際に、年平均所定労働時間数を基に算出していることが多いと思いますが、祝日などの関係で年間所定休日日数が変動した場合、年平均所定労働時間数も変わるため、残業単価が変わることとなります。

残業単価の変更は、固定的賃金の変動に該当しますので、月変対象となります。

このケースも、固定的な手当の金額が変更となるわけではないため、見落としてしまいがちです。

<ケース7>退職者の社会保険料2か月分徴収

基本給が当月締めの当月支給で、社会保険料の徴収が翌月徴収の場合、月末退職者の退職月は、社会保険料を2か月分徴収する必要があります。

例えば、4月末退職で、4月給与で3月分、4月分の2か月分の社会保険料を徴収する場合、4月変対象となっている可能性があるため、単純に3月分×2の金額を徴収すればよい、というわけではありません。

退職者が4月変の対象となっているかどうか確認の上、正しく2か月分の徴収をする必要があります。

退職月に月変対象かどうかを確認せず、単純に前月の社会保険料×2倍の金額を徴収すると、誤った金額となり、退職後に追加で徴収もしくは還付などの処理が必要となるケースがあります。

<最後に>給与ソフトまかせの判断はNG

月変(随時改定)は年金事務所でも見解が分かれたり、年金機構が公開している事例集なども常に更新されるほど、本当に様々なケースがあります。

基本的な固定的賃金の変動であれば、給与ソフトで判断できるものもありますが、すべてのケースに対応している給与ソフトはほぼありません。

給与ソフトに判断を任せてしまうと、冒頭記載したように、年金事務所の調査で月変漏れを指摘されることになりますので、あくまでも給与ソフトの判断は参考程度に、実際に月変対象となるかどうかは担当者が確認する必要があります。

迷ったら、お近くの年金事務所や顧問社労士へご相談ください。



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