就業規則がない場合、労働条件通知書はどう作るのが良いでしょうか?

<<Question>>

会社では、新しく社員を雇い入れるとき、労働条件通知書を交付する義務があると聞きました。インターネット上で労働条件通知書のテンプレートを探し、「一般労働者用モデル労働条件通知書」というものを発見しました。

これを参考に作成しようとしたところ、休日について「詳細は、就業規則第〇条~第〇条 」という書き方がされていました。

当社はスタートアップ企業の為、初めて社員を雇い入れるのですが、就業規則はまだ作成義務がないと聞いたため、作成しておりません。就業規則も合わせて作らなければならないのでしょうか。

就業規則を作らなくてもよい場合は、労働条件通知書をどのように作る必要がありますか?

 


<<Answer>>

就業規則は、社員数が10名に満たない場合、作成をする必要はございません。しかし、実際に働いてもらう方へ社内規則を通知する必要はございます。

そのため、就業規則の「絶対的記載事項」「相対的必要記載事項」の2点を網羅し、就業規則としての立ち位置を踏まえた労働条件通知書を交付することが望ましいです。

 

厚生労働省のホームページで公開されています「一般労働者用(常用・有期雇用型)労働条件通知書」ですが、これは就業規則がある場合のテンプレートとなっています。就業規則がない場合、このテンプレートのみでは定める内容が不足しています。

表形式のテンプレート、もはや就業規則を作成するような心持ちで労働条件通知書を作成いただく方が、後々のトラブルを防ぐためにもよろしいかと存じます。

 


ここから、細かくご説明していきます。

 

まず、就業規則で定めるべき事項を見ていきましょう。

「絶対的必要記載事項」は以下の3点です。

1⃣始業及び終業の時刻休憩時間、休日、休暇、交替制の場合には就業時転換に関する事項
2⃣賃金の決定計算及び支払の方法賃金の締切り及び支払の時期昇給に関する事項
3⃣退職に関する事項(解雇の事由を含む)

「相対的必要記載事項」は以下の8点です。

1⃣退職手当に関する事項
2⃣臨時の賃金(賞与)最低賃金額に関する事項
3⃣食費、作業用品などの負担に関する事項
4⃣安全衛生に関する事項
5⃣職業訓練に関する事項
6⃣災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
7⃣表彰、制裁に関する事項
8⃣その他全労働者に適用される事項

そして、労働条件通知書に記載すべき事項13点を見ていきます。

①労働契約の期間に関する事項
②就業の場所及び従業すべき業務に関する事項
始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く)の決定計算及び支払いの方法賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
退職に関する事項(解雇の事由を含む)
退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
⑧労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
安全及び衛生に関する事項
職業訓練に関する事項
災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
表彰及び制裁に関する事項
⑬休職に関する事項

これらを比較しますと、労働条件通知書で定めるべき事項の中に、就業規則の「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」どちらも含まれていることがわかります。

ただ、就業規則がある会社では「就業規則 第〇条~第〇条 を参照」という書き方をして、労働条件通知書が膨大な量になってしまうために省略することが多いです。 (例:始業及び終業の詳細事項、休日・休暇、退職に係る詳細事項、表彰及び制裁、休職 等)

就業規則がない場合は、これらについても省略することなく労働条件通知書に盛り込む必要があります。

 

また、上記の相対的必要事項については、必ずしも定める必要はありません。

よくあるものとしては「退職金制度を設けていないため記載しない」というケースです。制度がない場合は記載する必要はございません。(「退職金は支給しない」という記載をしていただくと、明快でよいかと存じます。)

ただし、記載されていない内容については実際に運用することができません。

代表的な例としては、懲戒処分です。この規定がなされていない場合、懲戒処分を行うことができません。そのため、「⑦表彰、制裁に関する事項」についてはモデル就業規則等を元に、丁寧に定めていただくことをお勧めします。

 

この作業は時間がかかりますし、漏れがあっては後で困りますので、労働基準監督署に相談したり、場合によっては社会保険労務士に相談したりしながら進めていただくのがよろしいかと存じます。

 



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