
協同組合グローブ事件(R06.04.16最三小判)
◇事件の概要◇
1.X(原告=反訴被告、控訴人=被控訴人、被上告人)は、外国人の技能実習に係る監理団体であるY(被告=反訴原告、控訴人=被控訴人、上告人)に雇用され、技能実習生の指導員として勤務していた。
2.Xは、実習実施者への訪問指導、技能実習生への指導・支援等の業務に従事していた。Xは、本件業務に関し、自ら具体的なスケジュールを管理し、貸与されていた携帯電話等によって随時具体的に指示を受けたり報告をしたりすることはなかった。Xの就業時間は午前9時から午後6時まで、休憩時間は正午から午後1時までと定められていたが、Xが実際に休憩していた時間は就業日ごとに区々であった。Xはタイムカードを用いた労働時間の管理を受けておらず、自らの判断により直行直帰することもできたが、月末には、就業日ごとの始業・終業時刻、休憩時間、訪問先、訪問時刻、業務内容等を記入した業務日報をYに提出し確認を受けていた。
3.Xは、Yに対し、時間外労働等に対する賃金の支払等を求めて本件訴えを提起した。Yは、Xの業務の一部については労基法38条の2第1項の「労働時間を算定し難いとき」に当たり、同条により所定労働時間労働したものとみなされる等と主張し、これを争っている。
第1審(R04.05.17熊本地判(労経速2495号9頁))および原審(R04.11.10福岡高判 判例集未登載)は、Xへの労基法38条の2第1項の適用を否定し、Xの上記賃金請求の一部を認容した。これに対し、Yが上告受理申立てをした。
◇判例のポイント◇
1.Xの業務は多岐にわたり、Xは、自ら具体的なスケジュールを管理し、所定の休憩時間とは異なる時間に休憩をとることや自らの判断により直行直帰することも許されていたものといえ、随時具体的に指示を受けたり報告をしたりすることもなかった。
このような事情の下で、業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、業務に関する指示及び報告の方法、内容やその実施の態様、状況等を考慮すれば、Xが担当する実習実施者や1か月当たりの訪問指導の頻度等が定まっていたとしても、Yにおいて、Xの事業場外における勤務の状況を具体的に把握することが容易であったと直ちにはいい難い。
2.原審は、XがYに提出していた業務日報に関し、①その記載内容につき実習実施者等への確認が可能であること、②Y自身が業務日報の正確性を前提に時間外労働の時間を算定して残業手当を支払う場合もあったことを指摘した上で、その正確性が担保されていたなどと評価し、もって本件業務につき本件規定の適用を否定したものである。
しかし、上記①については、単に業務の相手方に対して問い合わせるなどの方法を採り得ることを一般的に指摘するものにすぎず、実習実施者等に確認するという方法の現実的な可能性や実効性等は、具体的には明らかでない。上記②についても、Yは、本件規定を適用せず残業手当を支払ったのは、業務日報の記載のみによらずにXの労働時間を把握し得た場合に限られる旨主張しており、この主張の当否を検討しなければYが業務日報の正確性を前提としていたともいえない上、Yが一定の場合に残業手当を支払っていた事実のみをもって、業務日報の正確性が客観的に担保されていたなどと評価することができるものでもない。
以上によれば、原審は、業務日報の正確性の担保に関する具体的な事情を十分に検討することなく、業務日報による報告のみを重視して、本件業務につき本件規定にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないとしたものであり、このような原審の判断には、本件規定の解釈適用を誤った違法があるというべきである。
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