
短時間・単発の就労を内容とする労働契約の下で働くいわゆる「スポットワーク」のうち、その雇用仲介を行う事業者(以下「スポットワーク仲介事業者」という。)が提供するサービス(以下「雇用仲介アプリ」という。)を利用するもの(以下単に「スポットワーク」という。)については、労働者自身の都合に合わせて働くことができることのみならず、一時的な人手不足が生じた場合に迅速に募集できるなど、労働者及び事業主双方にとって利便性が高いことなどから、雇用仲介アプリの登録者数や利用者数が増加している状況です。
「スポットワーク」の労務管理について、注意点を確認しましょう!
1⃣労働契約締結時における注意点
・労働契約の締結者
スポットワークは、事業主とスポットワーカーが直接労働契約を締結することとなり、労働基準法等を守る義務は、労働契約を締結した事業主に生じます。

・労働契約の成立時期
労働契約の成立時期は個別の具体的な状況によります。原則として、労働契約の成立をもって労働関係法令が適用されることになるので、労使双方で成立時期の認識を共有した上で、労働契約を締結することが求められます。
スポットワークでは、アプリを用いて、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募し、面接等を経ることなく、短時間にその求人と応募がマッチングすることが一般的です。
面接等を経ることなく先着順で就労が決定する求人では、別途特段の合意がなければ、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募した時点で労使双方の合意があったものとして労働契約が成立するものと一般的には考えられます。
労働契約成立後の解約(いわゆる「キャンセル」)について、その事由や期限をあらかじめ示した契約(解約権留保付労働契約)を労使間で締結する場合には、当該事由が合理的であることや、労働契約法第3条第1項の労使対等の原則の趣旨を踏まえスポットワーカーにのみ不利な内容にならないことに留意する必要があります。
なお、一旦確定した労働日や労働時間等の変更は、労働条件の変更に該当し 、事業主とスポットワーカー双方の合意が必要です。
・労働契約成立後は労働基準法等を守りましょう
労働契約が成立すると、事業主には労働基準法等を守る義務が生じます。予定された就業開始前に労働条件を明示することなどが必要となります。
労働条件を明示しなかった場合には、労働基準法違反となります。労働条件を書面の交付などの方法で明示することは事業主の義務であり、未然にトラブルを回避することにもつながります。
労働条件通知書の交付はスポットワーク仲介事業者が代行してくれる場合もありますが、交付は事業主の義務なので、きちんと交付されているか、その内容は適切か、事業主の皆さまは確実に確認しましょう。
もしスポットワーク仲介事業者から交付されていない場合、事業主から交付する必要があります。
2⃣休業させる場合の注意点
労働契約成立後に事業主の都合で丸1日の休業または仕事の早上がりをさせることになった場合は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」となるので、スポットワーカーに対し、所定支払日までに休業手当を支払う必要があります。
3⃣賃金・労働時間に関する注意点
事業主の指示により、就業を命じた業務に必要な準備行為(指定の制服への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(掃除等)を就業先内において行った時間などは労働時間に当たります。求人の際に、これら着替え等の時間も含めて始業・終業時刻を設定しましょう。予定した始業時刻より前に、事業主の指示により、就業を命じた業務に必要な準備行為(指定の制服への着替え等)などが発生した場合は、その時間を労働時間として取り扱ってください。
なお、事業主の指示により待機を命じた時間も労働時間に該当することから、待機後の事由にかかわらず、事業主は待機時間に対する賃金を支払う必要があることに留意してください。
スポットワーカーから予定していた労働時間と異なる実際の労働時間による修正の承認申請がなされた場合は、事業主は、賃金はスポットワーカーの生活の糧であることを踏まえ、予定された労働時間に基づき勤務した賃金は遅滞なく支払うとともに、予定の労働時間と異なる時間については、速やかに確認し、労働時間を確定させましょう。
4⃣その他の注意点
・労災について
スポットワーカーが通勤の途中または仕事中にケガをした場合、スポットワーカーは就労先の事業について成立する保険関係に基づき労災保険給付を受けることができます。(労働者災害補償保険法第7条等)
・労働災害防止対策
スポットワーカーの労働災害防止のため、労働安全衛生法等に基づく各種措置(雇入れ時等における機械等の危険性や安全装置の取扱方法等の教育の実施等)を講じましょう。
・ハラスメント対策
スポットワーカーに対するパワハラやセクハラなどハラスメント防止のため、労働施策総合推進法等に基づく各種措置(相談窓口や行為者に対する措置内容の周知等)を講じましょう。
厚生労働省|スポットワーク」の労務管理
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