(社労士法第23条の2)非社労士との提携の禁止とは?

社会保険労務士法(以下、社労士法)には、「非社会保険労務士との提携の禁止」というのが規定されていますが、ご存じでしょうか?

社労士法第23条の2(非社労士との提携の禁止)には、「社会保険労務士は、第26条又は第27条の規定に違反する者から事件のあっせんを受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない」と規定されています。

「非社労士との提携の禁止」とは、社労士が「名称の使用制限(社労士法第26条)」又は「業務の制限(社労士法第27条)」に違反する者と接触することを禁止し、社労士がこれらの違反行為を直接的、間接的に助長しないようにするものです。

本条の「事件のあっせん」とは、社労士と事件の当事者である顧客との間に介在し、当該事件に係る委任等の契約の成立の便宜を図り、その成立を容易ならしめる行為をいい、常態的に社労士法第26条又は第27条の規定に違反する者のあっせん行為に対して謝礼その他の実質的な利益の授受がある場合が問題とされますが、社労士が知人や取引先から顧問先を紹介されるようなケースは該当しません。

<営業代行サービスとの関わり>

「営業代行サービス」は、営業コンサルティングという名目で料金が一定の額に固定されているものもあるため、「成功報酬型の料金による業務のあっせんでなければ法違反にならない」といった誤った解釈をすることも少なくありません。

「営業代行サービス」を利用した場合、顧問契約等の成立にあたっては顧客と社労士事務所又は社労士法人が直接契約することになるので、社労士法第23条の2違反にならないと誤解されますが、このサービスはあくまで顧客の紹介につながることを目的とした活動を業者が行うものであり、「社労士が知人や取引先から顧問先を紹介されるようなケース」とは異なります。

また、経営相談等も含めたサービスとして営業コンサルティング料という一定の額の料金が固定されていても、社労士でない者からの事件のあっせん行為に対して実質的な利益の授受があると解されるので、現実に顧問契約が成立してなくても社労士法第23条の2違反が成立するおそれがあります。

(例)
・営業代行サービス会社Aが助成金の相談セミナー等を通じて集めた顧客Bに対して、申請書の作成は提携社労士が行うとして社労士Cを紹介
・社労士Cと顧客Bは顧問契約をする
・上記顧問契約により、社労士Cが申請書作成業務で得た報酬の中から営業代行サービス会社Aに顧客紹介料を支払う

 上記の場合、顧客Bと社労士Cは直接契約しているように見えるが、書類作成で得た報酬の一部が営業代行サービス会社Aに入っているので、実質的には営業代行サービス会社Aが申請書作成業務を受託し、社労士Cに再委託したようにも見えかねない。

 営業代行サービス会社Aが顧客Bから社労士独占業務を受託し、その業務を社労士Cに再委託した場合、会社Aは社労士法第27条に違反し、社労士Cも社労士法第27条の規定に違反する者から事件のあっせんを受けたとして、社労士法第23条の2に違反する。

<社労士業務紹介ビジネスとの関わり>

社労士に顧客を紹介し、成約に至った場合に、社労士が顧客から受け取る報酬の35%を手数料として請求するマッチングサイトなどが増えています。

社労士ではない者に対し、成約ごとに社労士業務に係る金銭が支払われることは、「社労士ではない者からの事件のあっせん行為に対する実質的な利益の授受がある」ものと解され、法第27条(業務の制限)の規定に抵触するとともに、利用した社労士も法第23条の2(非社会保険労務士との提携の禁止)の規定に抵触し得ます。

ただし、社労士紹介サイトやマッチングサイトの利用がすべて禁止されているわけではなく、サイトへの掲載料やシステム管理費等として利用に必要な費用であれば、法第27条(業務の制限)、法第23条の2(非社会保険労務士との提携の禁止)には該当しません。

あくまでも禁止されているのは、報酬の金額や成約件数に応じて、金銭が支払われるようなケースとなります。



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