(初めての人事労務)年度更新で注意すべきポイントは?

1⃣年度更新とは?

労働保険の年度更新とは、新年度の概算保険料を納付するための申告・納付と前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付の手続です。

健康保険料や厚生年金保険料は毎月納付していますが、労働保険料(労災保険料及び雇用保険料)は年に1度まとめて納付します。

この年度更新の手続きは、6月1日から7月10日までの間に行う必要があります。


2⃣賃金に含むもの、含まれないもの

労働保険における賃金総額とは、事業主がその事業に使用する労働者に対して賃金、手当、賞与、その他名称のいかんを問わず労働の対象として支払うすべてのものをいい、賃金に含まないものは次のとおりです。

役員報酬 取締役等に対して支払う報酬

結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金、年功慰労金、勤続報奨金、退職金

労働協約・就業規則等の定めがあるといないとを問わない
出張旅費、宿泊費、赴任手当 実費弁償と考えられるもの
工具手当、寝具手当 労働者が自己の負担で用意した用具に対して手当を支払う場合
休業補償費 法定額60%を上回った差額分を含めて賃金としない
傷病手当金  
解雇予告手当 解雇日の30日前以前に予告をしないで解雇する場合に支払う手当
財産形成貯蓄等のため事業主が負担する奨励金等 事業主が一定の率又は額の奨励金を支払う場合(持株奨励金など)
会社が全額負担する生命保険の掛金 労働者を被保険者として保険会社と生命保険等厚生保険の契約をし、事業主が保険料を全額負担するもの
持ち株奨励金 労働者が持ち家取得の為融資を受けている場合で事業主が一定の率又は額の利子補給金当を支払う場合
住宅の貸与を受ける利益(福利厚生施設として認められるもの) 住宅貸与されない者全員に対し(住宅)均衡手当を支給している場合は賃金となる場合がある

3⃣賃金集計のポイント

労働保険料の算定基礎となる賃金集計は、4月~3月の各月の労災保険・雇用保険対象賃金を集計していきますが、注意したいポイントがいくつかあります。

 1.雇用保険非加入時賃金を除く

  例えば、4月に入社する新入社員が、3月にアルバイト(雇用保険非加入)として勤務しており、3月の時給分と4月の月給が同時に4月に支給されるような場合、3月の時給分は労災保険対象にはなりますが、雇用保険は対象外となります。誤って4月に支給されている賃金すべてが雇用保険対象として集計しないよう、注意が必要です。給与システムで自動的に雇用保険対象として集計されている場合は、確認して修正しましょう。

 2.遡及して雇用保険へ加入、喪失した場合の賃金の修正

  例えば、6月に、4月にさかのぼって雇用保険への加入手続きをした場合、4月の給与計算時点では雇用保険対象賃金へ含まれていないため、給与システムでは自動集計されてないケースがあります。そのため、手続きで遡及の処理をしていないか確認し、遡及の処理を行っている場合には賃金集計を修正しましょう。

 3.出向者の賃金

 労災保険では出向労働者がいる場合、出向先事業主の指揮監督を受けて労働している場合には、出向元で支払われている賃金も出向先で支払われている賃金に含めて計算し、出向先で対象労働者となります。そのため、出向元の賃金集計からは除き、出向先の賃金集計に加算して申告する必要があります。


4⃣概算保険料の算出

前年度の確定賃金総額の集計が無事に終了したら、通常、前年度確定賃金総額と同額を概算賃金総額の見込み額とします。しかし、大幅に人員の増減が見込まれるなど、賃金総額の見込み額が前年と比較して1/2より少ない、又は2倍より多くなる場合は、その見込み額を概算賃金総額として、概算保険料を算出します。


5⃣延納とは?

労働保険申告書に「延納の申請」という欄があり、保険料を一括納付するか、3回に分けて延納するか申告することができます。

ただし、「延納」の対象となるのは、「概算保険料」のみで、概算保険料額が40万円以上(労災保険又は雇用保険のどちらか一方のみ成立の場合は20万円以上)の場合に限ります。


6⃣充当額・還付額・不足額とは?

労働保険料の申告は、まず概算保険料を申告・納付し、翌年度に算出した確定保険料との差額により、還付・充当するか、又は不足額として翌年度の概算保険料と同時に納付するかが決まります。

確定保険料<概算保険料の場合・・・翌年度の概算保険料へ充当するか、充当せずに還付するかを選択します。還付する場合には、別途還付請求書を提出します。

概算保険料<確定保険料の場合・・・不足額は翌年度の概算保険料と同時に納付することとなります。


7⃣労働保険料を口座振替で納付するには?

労働保険料は口座振替による納付が可能です。口座振替の手続きを行っておけば、納付忘れや遅延がなくなるため、延滞金を課される心配がありません。

以下URLより口座振替の申込書を取得し、記載して金融機関の窓口へ提出すれば、手続きが可能です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/hokenryou/index.html

第1期分から口座振替を行う場合には、2月25日までに口座振替の手続きを行っておく必要がありますが、8月15日まで手続きをすれば第2期分から、10月11日まで手続きをすれば第3期分から口座振替が可能です。



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