労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A10選

事業主は労働者の募集及び採用について、年齢に関わりなく均等な機会を与えなければならないこととされ、年齢制限の禁止が義務化されています。

◇年齢制限禁止の目的

個々人の能力、適性を判断して募集・採用することで、一人ひとりにより均等な働く機会が与えられるようにすることを目的としています。
少子高齢化のなかで、我が国経済の持続的な成長のためには、個々人が年齢ではなくその能力や適性に応じて活躍の場を得られることが重要とされています。

◇年齢制限禁止のポイント

●労働者の募集及び採用の際には、原則として年齢を不問としなければなりません。
●例外的に年齢制限を行う場合は、例外事由に該当する必要があります。
●公共職業安定所を利用する場合をはじめ、民間の職業紹介事業者、求人広告などを通じて募集・採用する場合や、事業主が自社のホームページなどで直接募集・採用する場合を含め、広く「募集・採用」に適用されます。
●パート、アルバイト、派遣など雇用の形態を問いません。
●形式的に求人票を「年齢不問」とすれば良いということではありません。年齢を理由に応募を断ったり、書類選考や面接で年齢を理由に採否を決定することは法違反になります。また、応募者の年齢を理由に雇用形態や職種などの求人条件を変えることもできません。

◇Q&A

(1)求人の表現について

Q1:広告内に「スタッフ全員が 20 代のフリーター」等という、その企業の現状を表すキャッチコピーやスタッフの写真等を表示したり、「20 代が主役の会社」といった表現を記載したりすることは認められますか。
A: 「スタッフ全員が20代のフリーター」といった会社に関する事実を表示することは、直接には年齢制限に当たりません。ただし、「スタッフが 20 代でなければならない」「20 代を他の年齢層に比べて優先して募集している」といった誤解を求職者に生じさせるおそれがないように努めていただく必要があります。

Q2:応募資格を「年齢不問」とした上で、「学生歓迎」「35 歳未満の方歓迎」「60 歳以上の方歓迎」「就職氷河期世代歓迎」などの併記をすることは認められますか。
A: 「学生歓迎」は年齢制限に当たりません。
「35 歳未満の方歓迎」は、35 歳未満の方を他の年齢層に比べて優遇するものであり、実質的に年齢制限を行っていることと同じと考えられることから、法の趣旨に照らし適当ではないものと考えます。ただし、3号のイなどの例外事由に当たる場合は違法とはなりません。同様に、「60 歳以上の方歓迎」については、3号の二に定められる例外事由に合致するものであるため違法とはなりません。

Q3:求人に「40 歳以上歓迎マーク」や「60 歳以上歓迎マーク」といった印をつけることはできないのでしょうか。
A: 歓迎マークの意味するところは、対象者を他の年齢層に比べて優遇するとの趣旨ですので、他の年齢層の求職者の応募を妨げるおそれがあり、法の趣旨に照らし、原則として適当でないと考えられます。ただし、「60 歳以上歓迎マーク」については、その趣旨が例外事由3号のニに該当することから違法とはなりません。

Q4:「○歳位」や「○歳前後」といった表現を付しつつ年齢制限を行ってもよいのですか。
A: 個々の例外事由の趣旨が「例外的に年齢制限が認められる場合として必要最小限に設けられているもの」であることにかんがみれば、そのような表記をして募集することは法の趣旨に照らし適当ではありません。求職者に誤解を招くおそれがないよう、表現を明確化させる必要があります。

(2)求人に付す条件について

Q5:「平成○○年4月2日以降に生まれた者」という条件を定めても良いでしょうか。
A: 「平成○○年4月2日以降に生まれた者」という記載は、実質的に年齢制限を定めていることと同じですので、原則として違法となります。ただし、就職氷河期世代で安定した職業に就いていない者を対象とした求人については、令和 7 年 3 月 31 日までの暫定措置として、「昭和 43 年4月2日から昭和 63 年4月1日までに生まれた方」という年齢制限を付して募集することが可能です。

Q6:「高校卒業以上」という条件を定めても良いでしょうか。良い場合は、例えば「18 歳以上」という年齢制限を行っても良いでしょうか。
A: 高校卒業などの学歴の制限は年齢制限には当たりませんので、「高校卒業以上」のような条件を定めることは可能です。ただし、これをもって「18 歳以上」という年齢制限を定めることはできません。

Q7:「来年3月卒業予定の者」という条件は、年齢制限をしていることになるのでしょうか。また、「学校卒業後3年以内の者」という記載はどうでしょうか。
A: 「来年3月卒業予定の者を募集」のように、年齢制限を付さずに新規学卒者のみを募集・採用する場合は、年齢制限をした募集・採用には該当しません。ただし、新規学卒者以外の若者にも門戸を開くように努めていただくことが必要です(青少年の雇用の促進等に関する法律第 7 条に基づく「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」)。また、「学校卒業後3年以内の者」という記載も年齢制限には当たりません。

Q8:特定の資格の受験にあたって年齢制限がある場合、当該資格を条件として定めると、その募集・採用についても年齢制限をしていることになってしまうのでしょうか。それとも、当該資格を条件としたときは、当該資格の範囲で年齢制限を付してもよいのでしょうか。
A: 資格の受験資格が年齢制限をしている場合に、当該資格を有することを労働者の募集・採用の要件とすることは法違反にはなりません。(ただし、当該資格が募集・採用を行う企業独自のものであり、かつ、当該資格の取得が採用と密接不可分であるといった場合には、年齢制限をしていると考えられます。)
ただし、このような資格を条件として定める場合は、当該資格の受験が認められる年齢であることが条件となることは明らかですので、当該資格と別に年齢制限を記載することは、適切ではないと考えられます。

Q9:「○○業務の経験○年以上」といった業務経験の条件を定めることは可能でしょうか。
A: 年齢不問の求人について、業務経験の有無や一定の経験年数を条件とすることは問題ありません。ただし経験年数については、合理的な理由がなく、かつ、非常に長い期間が設定されている場合などは事実上の年齢制限をすることが意図されていると解されるため、法の趣旨に照らし適当ではありません。

Q10:経験のある方を年齢不問で求人しようと思いますが、一定の年齢以下の方であれば、長期勤続においてキャリア形成を図ることが出来るので経験不問にしても良いと考えています。「年齢不問、要経験。ただし○歳未満は未経験でも可」「年齢不問。○歳以上は経験者のみ」といった記載は良いでしょうか。
A: 「○歳未満は未経験でも可」「○歳以上は経験者のみ」という表現は、例外事由に該当しない年齢制限が行われていると考えられることから、労働施策総合推進法第9条の趣旨に照らして不適切です。一方で、若年者を募集する場合に「○歳以下、経験不問」とすることは可能であるため(労働施策総合推進法施行規則第1条の3第1項第3号イ)、これと年齢不問の求人を組み合わせて、複合的に「年齢不問、要業務経験。○歳以下の場合は経験不問」というように記載することは認められます。
ただし、年齢によって条件が異なるこうした求人の場合は、本来求人票を「年齢不問、要業務経験」「○○歳未満、経験不問」の2つに分けるなどし、求職者に分かりやすい募集にしていただくのが適当と考えられます。

 

【参考】

厚生労働省|その募集・採用年齢にこだわっていませんか?

厚生労働省|労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A ←その他のQ&Aはこちら



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