「全世代型社会保障改革の方針について」(令和2年12月15日閣議決定)等を踏まえ、現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、全ての世代で広く安心を支えていく「全世代対応型の社会保障制度」を構築するため、所要の改正が行われます。
この中で、人事の実務に関係する改正内容をまとめました。
1⃣傷病⼿当⾦の⽀給期間の通算化(令和4年1月~)
現在、傷病手当金の⽀給期間は、⽀給開始⽇から起算して1年6ヶ⽉を超えない期間とされています。(その間、⼀時的に就労した場合であっても、その就労した期間が1年6ヶ⽉の計算に含まれる。)
<改正後>
がん治療のために⼊退院を繰り返すなど、⻑期間に渡って療養のため休暇を取りながら働くケースが存在し、治療と仕事の両⽴の観点から、より柔軟な所得保障を⾏うことが可能となるよう、支給期間を通算化し、1年6か月まで支給されるようになります。
2⃣育児休業中の社会保険料免除要件の⾒直し(令和4年10月~)
(1)毎月の給与に係る保険料免除
現在の育児休業中の社会保険料免除については、月末時点で育休を取得している場合に、当⽉の保険料が免除される仕組みとなっています。
これにより、短期間の育休について、月末をまたぐか否かで保険料が免除されるか否かが決まるという不公平が発⽣していました。
<改正後>
育休開始日の属する月については、その月の末日が育児休業期間中である場合に加えて、その月中に2週間以上育休を取得した場合にも保険料を免除されるようになります。
(2)賞与に係る保険料免除
賞与に関しても、現在は月末時点で育児休業を取得していれば、その月の賞与に係る保険料が免除されるようになっています。
<改正後>
特に男性の場合は、短期間の育休取得であるほど、賞与保険料の免除を目的として育児休業月を選択する誘因が働きやすいため、1か月超の育児休業取得者に限り、賞与保険料の免除対象とされます。
3⃣任意継続被保険者制度の⾒直し(令和4年1月~)
(1)保険料について
現在は、①従前の標準報酬月額又は②当該保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額に保険料率を乗じた額を被保険者が全額負担することとなっています。
<改正後>
保険料の算定基礎を「①当該退職者の従前の標準報酬月額又は②当該保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額のうち、いずれか低い額」から「健保組合の規約により、従前の標準報酬月額」とすることも可能となります。
(2)資格喪失について
現在は、以下のいずれかに該当したときのみ、任意継続の資格喪失が可能となります。
・任意継続被保険者となった日から起算して2年を経過したとき
・死亡したとき
・保険料を納付期⽇までに納付しなかったとき
・被用者保険、船員保険⼜は後期⾼齢者医療の被保険者等となったとき
<改正後>
被保険者の生活実態に応じた加入期間の短縮化を支援する観点から、これまでできなかった被保険者の任意脱退を認めることとなります。
(参考)https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000739687.pdf
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