自然災害時の労働基準法や労働契約法の取扱いなどに関するQ&A

令和6年能登半島地震の発生により、被害を受けられた事業場におけるQ&Aが公開されましたので、一部ご紹介いたします。


1.地震、洪水等の自然災害の影響に伴う休業に関する取扱いについて

<<Question>>

被災により、事業の休止などを余儀なくされ、やむを得ず休業とする場合にどのようなことに心がければよいのでしょうか。

<<Answer>>

被災により、事業の休止などを余儀なくされた場合において、労働者を休業させるときには、労使がよく話し合って労働者の不利益を回避するように努力することが大切であるとともに、休業を余儀なくされた場合の支援策も活用し、労働者の保護を図るようお願いいたします。
支援策としては、災害時における雇用保険制度の特別措置や雇用調整助成金があります。

詳しくは、最寄りの都道府県労働局またはハローワークにお問い合わせください。

<<Question>>

従来、労働契約や労働協約、就業規則、労使慣行に基づき、使用者の責に帰すべき休業のみならず、天災地変等の不可抗力による休業について休業中の時間についての賃金、手当等を支払うこととしている企業が、災害に伴う休業について、休業中の時間についての賃金、手当等を支払わないとすることは、適法なのでしょうか。

<<Answer>>

労働契約や労働協約、就業規則、労使慣行に基づき、使用者の責めに帰すべき休業や天変地変等の不可抗力による休業中に従来支払われてきた賃金、手当等を、災害に伴う休業について支払わないとすることは、労働条件の不利益変更に該当します。
このため、労働者との合意など、労働契約や労働協約、就業規則等のそれぞれについての適法な変更手続をとらずに、賃金、手当等の取扱いを変更する(支払わないこととする)ことはできません。
なお、企業側の都合で休業させた場合には、労働者に休業手当を支払う必要があります。


2.地震、洪水等の自然災害の影響に伴う解雇等について

<<Question>>

災害を理由に雇用する労働者を解雇・雇止めすることはやむを得ない対応として認められるのでしょうか。

<<Answer>>

災害を理由とすれば無条件に解雇や雇止めが認められるものではありません。
また、災害の影響により、厳しい経営環境に置かれている状況下においても、休業を余儀なくされた場合の支援策(災害時における雇用保険制度の特例措置や雇用調整助成金。)も活用し、出来る限り雇用の安定に配慮していただくことが望まれます。
解雇については、法律で個別に解雇が禁止されている事由(例:業務上の傷病による休業期間及びその後30日間の解雇(労働基準法第19条)等)以外の場合は、労働契約法の規定や裁判例における以下のようなルールに沿って適切に対応する必要があります。 

①無期労働契約(期間の定めのない労働契約)の場合

労働契約法第16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定されています。 また、例えば、災害によって事業場が被害を受け、操業不能に陥ったことを理由とする解雇など、経営上の理由により解雇を行う場合は、いわゆる「整理解雇」に該当すると考えられますが、この整理解雇については、裁判例において、解雇の有効性の判断に当たり、(1)人員整理の必要性、(2)解雇回避努力義務の履践、(3)被解雇者選定基準の合理性、(4)解雇手続の妥当性、という4つの事項が考慮されており、留意が必要です。

②有期労働契約(期間の定めのある労働契約)の場合

※ パートタイム労働者、派遣労働者、契約社員などに多く見られる契約形態です。
なお、期間の定めのない労働契約の下で働くパートタイム労働者や派遣労働者については①をご覧ください。

労働契約法第17条第1項では、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」と規定されており、有期労働契約期間中の解雇は、無効と判断される可能性が無期労働契約の解雇よりも高いと考えられるので、留意が必要です。
(※) ※ 裁判例においても、「当該解雇が、3か月の雇用期間の中途でなされなければならないほどの、やむを得ない事由の発生が必要であるというべきである。」とされています。

また、有期労働契約であっても、反復更新され、無期労働契約と実質的に異ならない状態に至っている契約である場合や、契約締結時の経緯等から雇用継続への合理的期待が認められる場合は、労働契約法第19条(いわゆる「雇止め法理」について、最高裁判例の趣旨を規定したもの。)の規定により、雇止めが認められないことがあります。
なお、整理解雇を行う場合に、有期労働契約やパートタイムの労働者を、非正規雇用であることのみを理由に、一律に解雇対象者として選定することは、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を定めたパートタイム・有期雇用労働法の規定に違反する可能性があります。
個別の解雇・雇止めの当否については最終的には司法における判断となりますが、これらの規定の趣旨や裁判例等に基づき、適切に対応されることが望まれます。 

<<Question>>

新卒内定者の内定を取り消したり、入社してすぐに休ませてもいいでしょうか。

<<Answer>>

新卒の採用内定者について労働契約が成立したと認められる場合には、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない採用内定の取消しは無効となります。
事業主は、このことについて十分に留意した上で、採用内定の取消し等を防止するため、最大限の経営努力を行うとともに、あらゆる手段を講じていただき、取消しを行う前に、最寄りのハローワークにご連絡ください。
また、新入社員を自宅待機等休業させる場合には、当該休業が使用者の責めに帰すべき事由によるものであれば、使用者は、労働基準法第26条により、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。 


3. 労働基準法第24条(賃金の支払)について

<<Question>>

被災地への義援金を社内で募る場合、募金額を各労働者から聞いて取りまとめ、賃金から控除することは問題ないでしょうか。

<<Answer>>

賃金からの控除については、労働基準法第24条においては、賃金の全額を直接労働者に支払うことが原則とされていますが、その例外として、 ① 法令に別段の定めがある場合 ② 事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等との書面による協定がある場合 に限り、賃金から一部の金額を控除することが認められています。
上記②の労使協定により控除できるのは、社宅や寮の費用など、労働者が当然に支払うべきことが明らかなものとされています。
労働者が自主的に募金に応じる場合は、一般的にはその労働者が当然に支払うべきことが明らかなものと考えられるため、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合等との書面による協定を締結し、その労働者の賃金から募金額を控除することは可能です。
なお、②の労使協定があったとしても、募金に応じる意思がない労働者の賃金から義援金として一律に控除することは認められず、労働基準法違反となりますので注意が必要です。


4. 労働基準法第25条(非常時払)について

<<Question>>

労働基準法第25条の「災害」には、自然災害も含まれるでしょうか。

<<Answer>>

労働基準法第25条では、労働者が、出産、疾病、災害等の非常の場合の費用に充てるために請求する場合は、賃金支払期日前であっても、使用者は、既に行われた労働に対する賃金を支払わなければならないと定められています。
ここでいう「疾病」、「災害」には、業務上の疾病や負傷のみならず、業務外のいわゆる私傷病に加えて、洪水等の自然災害の場合も含まれると解されています。


【参考】

厚生労働省|令和6年能登半島地震に伴う労働基準法や労働契約法等に関するQ&A



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