(初めての人事労務)1年単位の変形労働時間制の基礎知識

これまで、フレックスタイム制、専門業務型裁量労働制、1箇月単位の変形労働時間制についてまとめていますが、今回は1年単位の変形労働時間制についてまとめていきます。

(初めての人事労務)フレックスタイム制の基礎知識

(初めての人事労務)専門業務型裁量労働制の基礎知識

(初めての人事労務)1箇月単位の変形労働時間制の基礎知識


1⃣1年単位の変形労働時間制とは?

1年単位の変形労働時間制とは、業務に繁閑のある事業場において、繁忙期に長い労働時間を設定し、かつ、閑散期に短い労働時間を設定することにより効率的に労働時間を配分して、年間の総労働時間の短縮を図ることを目的としています。


2⃣1年単位の変形労働時間制を導入するには?

1年単位の変形労働時間制を採用する場合は、労使協定を締結し、1か月を超え1年以内の一定期間を平均し1週間の労働時間を40時間以下の範囲にすること等の条件を満たした上で、所轄労働基準監督署長に届出ることが必要となります。

労使協定では次の5項目について協定を締結する必要があります。

①対象労働者の範囲

1年単位の変形労働時間制により労働させる労働者の範囲を明確にする必要があります。

②対象期間(1か月を超え1年以内の期間)及び起算日

1か月を超え1年以内の期間を定めて対象期間とします。

③特定期間

「特定期間」は「対象期間」のうち特に業務が繁忙な時期として定められた期間をいい、1週間に1日の休日を確保することで最長連続12日の労働日数を設定することができます。
ただし、対象期間のうち相当部分を特定期間として定める労使協定は、法の趣旨に反して認められません。

④労働日及び労働日ごとの労働時間

対象期間を平均して、1週間の労働時間が40時間を超えないように対象期間内の各日、各週の所定労働時間を定めることが必要です。
原則、対象期間の全期間にわたって定めなければなりませんが、対象期間を1か月以上の期間に区分することとした場合には、以下を定めればよいこととなっています。

 ・最初の期間における労働日
 ・最初の期間における労働日ごとの労働時間
 ・最初の期間を除く各期間における労働日数
 ・最初の期間を除く各期間における総労働時間

最初の期間を除く各期間の労働日と労働日ごとの労働時間については、その期間の始まる少なくとも30日前に、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合(労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者)の同意を得て、書面により定める必要があります。

⑤労使協定の有効期間


3⃣労使協定の手続き

1年単位の変形労働時間制に関する労使協定を締結した場合は、これを所轄労働基準監督署長に届出る必要があります。また、常時10人以上の労働者を使用している事業場については、1年単位の変形労働時間制を採用する旨を就業規則に記載したうえで、これを所轄労働基準監督署長に届出る必要があります。


4⃣労働日数、労働時間の限度

1年単位の変形労働時間制では、1日10時間1週52時間が労働時間の限度として定められています。
また、労働日数の限度は、原則として1年間に280日となります(対象期間3か月以内の場合は制限なし)


5⃣割増賃金の計算方法は?

次の時間については時間外労働となり、割増賃金を支払う必要があります。

①1日の法定時間外労働
⇒労使協定で1日8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間

②1週の法定時間外労働
⇒労使協定で1週40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は1週40時間を超えて労働した時間(①を除く)

③対象期間の法定時間外労働
⇒対象期間の法定労働時間総枠(40時間×対象期間の歴日数÷7)を超えて労働した時間(①②を除く)

 

(参考)https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/jikanka/1nen.pdf



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