(雇用保険)特定受給資格者と特定受給理由者とは?

雇用保険の被保険者が離職した場合、雇用保険求職者給付の基本手当を受給することができますが、その際、特定受給資格者や特定理由離職者に該当するかどうかで、基本手当の所定給付日数が変わってきます。

それでは、特定受給資格者と特定理由離職者の違いとは何でしょうか?

1⃣特定受給資格者と特定理由離職者の違い

<特定受給資格者>

倒産・解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた者

<特定理由離職者>

特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由により離職したもの

<特定受給資格者又は特定理由離職者に該当した場合>

①被保険者期間が6ヵ月(離職以前1年間)以上あれば、失業等給付(基本手当)の受給資格を得ることができます
(特定受給資格者及び特定理由離職者以外は、被保険者期間が12カ月以上(離職以前2年間)必要です。)。

②失業等給付(基本手当)の所定給付日数が手厚くなる場合があります(※)。
以下の「特定理由離職者の範囲」のⅡに該当する場合を除きます。
 受給資格に係る離職理由、年齢、被保険者であった期間(加入期間)に基づき基本手当の所定給付日数が決定されます。被保険者であった期間(加入期間)が短い場合など、特定受給資格者及び特定理由離職者以外の通常の離職者と所定給付日数が変わらないこともあります。


2⃣特定受給資格者の範囲

Ⅰ 「倒産」等により離職したもの

倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等)に伴い離職した者
②事業所において大量雇用変動の場合(1カ月に30人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した者及び当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が離職したため離職した者
事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者
④事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者

Ⅱ 「解雇」等により離職した者

解雇(自己の責めに帰すべき重要な理由による解雇を除く。)により離職した者
②労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
③賃金(退職手当を除く。)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかったことにより離職した者
④賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した(又は低下することとなった)ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)
⑤離職の日の属する月の前6か月間のうちに3月連続した45時間、1月で100時間又は2~6月平均で月80時間を超える時間外労働及び休日労働が行われたため、又は事業主が危険もしくは健康障害の生ずる恐れがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険もしくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
⑥事業主が法令に違反し、妊娠中もしくは出産後の労働者又は子の養育若しくは家族の介護を行う労働者を就業させ、若しくはそれらの者の雇用の継続等を図るための制度の利用を不当に制限したこと又は妊娠したこと、出産したこと若しくはそれらの制度の利用の申出をし、若しくは利用をしたこと等を理由として不利益な取り扱いをしたため離職した者
⑦事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないため離職した者
⑧期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者
⑨期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記⑧に該当する者を除く。)
⑩事業主又は当該事業主に雇用される労働者から就業環境が著しく害されるような言動を受けたことによって離職した者
⑪事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合には、これに該当しない。)
⑫事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3か月以上となったことにより離職した者
⑬事業所の業務が法令に違反したため離職した者


3⃣特定理由離職者の範囲

Ⅰ 期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者
(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。)
(上記「特定受給資格者の範囲」のⅡの⑧又は⑨に該当する場合を除く。)(※)
※労働契約において、契約更新条項が「契約を更新する場合がある」とされている場合など、契約の更新について明示はあるが契約更新の確約まではない場合がこの基準に該当します。

Ⅱ 以下の正当な理由のある自己都合により離職した者(※)

体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者
父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を呼びなくされた場合
④配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者
⑤次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者
 ⅰ)結婚に伴う住所の変更
 ⅱ)育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼
 ⅲ)事業所の通勤困難な地への移転
 ⅳ)自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと
 ⅴ)鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
 ⅵ)事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
 ⅶ)配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避
⑥その他、上記「特定受給資格者の範囲」のⅡの⑪に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した者等

(※)給付制限を行う場合の「正当な理由」に係る認定基準と同様に判断されます。
 失業等給付(基本手当)の所定給付日数は、特定受給資格者及びⅠ以外の通常の離職者と同じです。


4⃣基本手当の所定給付日数

1. 特定受給資格者及び一部の特定理由離職者(※補足1)(3. 就職困難者を除く)

※補足1 特定理由離職者のうち「特定理由離職者の範囲」のⅠに該当する方については、受給資格に係る離職の日が2009年3月31日から令和7年3月31日までの間にある方に限り、所定給付日数が特定受給資格者と同様となります。

  被保険者であった期間
1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30歳以上35歳未満 120日 180日 210日 240日
35歳以上45歳未満 150日 240日 270日
45歳以上60歳未満 180日 240日 270日 330日
60歳以上65歳未満 150日 180日 210日 240日

 

2. 1及び3以外の離職者

  被保険者であった期間
  1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
全年齢 90日 120日 150日

 

3. 就職困難者

  被保険者であった期間
  1年未満 1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
45歳未満 150日 300日
45歳以上65歳未満 360日

(参照)https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000931439.pdf

 



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