働き方改革による多様な働き方が推奨されている中で、副業・兼業をすでに認めている企業や、認めるかどうか検討している企業が増えてきていると思います。
今回は、実際に副業・兼業を認めた場合、どのような実務対応が必要となるのかまとめてみました。
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1⃣就業規則の見直し
副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であるとされており、裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向で就業規則を見直すことが望ましいです。
ただし、以下の場合などには、副業・兼業を制限することが許されるとされています。
① 労務提供上の支障がある場合
② 業務上の秘密が漏洩する場合
③ 競業により自社の利益が害される場合
④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
2⃣労働時間管理について
「副業・兼業」には、他の会社等に雇用される労働契約のほか、事業主となって行うものや、請負・委託・準委任契約により行うものも含まれますが、労働契約にあたる場合には労働基準法が適用されるため、自社と副業先の労働時間を通算する必要があります。そのため、副業先での労働時間も管理する必要があり、過労や長時間労働にならないよう配慮することが必要です。
①所定労働時間の通算方法
<原則的な労働時間管理の方法>
(1)自社の所定労働時間と副業・兼業先の所定労働時間を通算し、時間外労働となる部分があるかを確認する。
(2)所定労働時間を通算した結果、自社の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、その超えた部分が時間外労働となり、時間的に後から労働契約を締結した企業が自社の36協定で定めるところによってその時間外労働を行わせることになる。
<簡便な労働時間管理の方法(管理モデルの導入)>
管理モデルとは、労働時間の申告等や労働時間の通算管理において、労使双方の手続上の負荷を軽くしながら、労働基準法に定める最低労働条件が遵守されやすくなる方法です。
(1) 副業・兼業の開始前に、各々の使用者の事業場における労働時間の上限をそれぞれ設定する。
Ⓐ当該副業・兼業を行う労働者と時間的に先に労働契約を締結していた使用者(使用者A)の事業場における法定外労働時間
Ⓑ時間的に後から労働契約を締結した使用者(使用者B)の事業場における労働時間(所定労働時間及び所定外労働時間)
※ⒶⒷを合計した時間数が時間外労働の上限規制である単月100時間未満、複数月平均80時間以内となるよう設定する。
(2)副業・兼業の開始後は、各々の使用者が(1)で設定した労働時間の上限の範囲内で労働させる。
(3)使用者Aは自らの事業場における法定外労働時間の労働について、使用者Bは自らの事業場における労働時間の労働について、それぞれ自らの事業場における36協定の延長時間の範囲内とし、割増賃金を支払う。
②所定外労働時間の通算方法
<原則的な労働時間管理の方法>
(1)副業・兼業の開始後は、自社の所定外労働時間と副業・兼業先における所定外労働時間とを当該所定外労働が行われる順に通算する。
※①の所定労働時間の通算は、労働契約締結の先後の順となっており、所定労働時間と所定外労働時間で通算の順序に関する考え方が異なる点に注意する必要がある。
(2)自社と副業・兼業先のいずれかで所定外労働が発生しない場合の取扱い
・ 自社で所定外労働がない場合は、所定外労働時間の通算は不要
・ 自社で所定外労働があるが、副業・兼業先で所定外労働がない場合は、自社の所定外労働時間のみ通算する
(3)通算した結果、自社の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、その超えた部分が時間外労働となり、そのうち自ら労働させた時間について、自社の36協定の延長時間の範囲内とする必要があるとともに、割増賃金を支払う必要がある。
<簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)>
(1)管理モデルで設定した労働時間の上限の範囲内において労働させる。
(2)使用者Aはその法定外労働時間について、使用者Bはその労働時間について、それぞれ割増賃金を支払う。
③通常の労働時間管理方法と管理モデルの違い
労働時間の通算の原則的な順序は、
①A所定労働時間
②B所定労働時間
③A所定外労働時間又はB所定外労働時間(実際に行われた順)
管理モデルにおける通算の順序は、原則と異なり
①A所定労働時間+A所定外労働時間(A法定内所定外労働時間・法定外所定外労働時間)の上限
②B労働時間(B所定労働時間+B所定外労働時間)の上限
となる点に留意が必要です。
(参考)副業・兼業の促進に関する ガイドライン
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