2024年4月1日に施行される裁量労働制の手続き及び運用に関して、Q&Aが公開されましたので、抜粋したものをご紹介します。
【 同意及び同意の撤回(専門型・企画型)】
<<Question>>
専門型・企画型において、使用者が明示した上で説明して労働者の同意を得ることを労使協定又は決議で定めることが適当であることに留意することが必要とされている事項のうち、「制度の概要」にみなし労働時間は含まれるか。
<<Answer>>
含まれる。使用者は、労使協定又は労使委員会で決議を行ったみなし労働時間の時間数のみならず、実際の労働時間数にかかわらずみなし労働時間の時間数労働したものとみなされることを明示した上で、説明を行うことが考えられる。
<<Question>>
専門型・企画型の適用に当たり、労働者の同意が自由な意思に基づいてされたものとは認められない場合には、労働時間のみなしの効果は認められないとされているが、「自由な意思に基づいてされたものとは認められない場合」とは具体的にどのような場合か。
<<Answer>>
個別具体的に判断する必要があるが、裁量労働制導入後の処遇等について説明することが求められており、例えば、労働者に対して、同意した場合に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の内容並びに同意しなかった場合の配置及び処遇について、同意に先立ち、誤った説明を行ったことなどにより、労働者が専門型又は企画型の適用の是非について検討や判断が適切にできないままに同意に至った場合などは、自由な意思に基づいてされたものとは認められないものと考えられる。
<<Question>>
専門型・企画型において、労使協定又は決議事項として「同意の撤回に関する手続」が設けられたが、労使協定又は決議において同意の撤回は認めない旨を定めることはできるか。
<<Answer>>
できない。同意の撤回に関する手続は、同意の撤回が可能であることを前提として定める必要がある。
【みなし労働時間と処遇の確保(専門型・企画型)】
<<Question>>
専門型・企画型において、裁量労働制を導入する際の労使委員会における調査審議又は労使での協議において、労働者の賃金水準を示すことが望ましいとされているが、具体的にどのように示せばよいのか。
<<Answer>>
専門型又は企画型の適用対象となる労働者の範囲や、当該労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度について検討を行い、相応の処遇を確保することに資するような内容を示すことが考えられ、裁量労働制の適用を予定している労働者が属する層の賃金水準が分かる資料を労使協定の当事者となる労働者の過半数で組織する労働組合等又は労使委員会に示すことが望ましい。
【健康・福祉確保措置(専門型・企画型)】
<<Question>>
専門型・企画型において、労働時間の状況の把握方法は「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切なもの」であることが必要とされているが、「その他の適切なもの」として、労働者の自己申告による把握を行うことは可能か。
<<Answer>>
原則として認められず、やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合において認められる。法第 38 条の3第1項第4号及び第 38条の4第1項第4号に規定する「労働時間の状況」の概念及びその把握方法は、安衛法第 66 条の8の3により把握することが義務付けられている「労働時間の状況」と同一のものであるため、「その他の適切なもの」として、やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合においては、労働者の自己申告による把握が考えられる。
<<Question>>
専門型・企画型における労働時間の状況の把握方法について、「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」として労働者の自己申告による把握が可能な場合とはどのような場合か。
<<Answer>>
「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」としては、例えば、労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合など、事業者の現認を含め、労働時間の状況を客観的に把握する手段がない場合があり、この場合に該当するかは、当該労働者の働き方の実態や法の趣旨を踏まえ、適切な方法を個別に判断すること。ただし、労働者が事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合などにおいても、例えば、事業場外から社内システムにアクセスすることが可能であり、客観的な方法による労働時間の状況を把握できる場合もあるため、直行又は直帰であることのみを理由として、自己申告により労働時間の状況を把握することは、認められない。
また、タイムカードによる出退勤時刻や入退室時刻の記録やパーソナルコンピュータの使用時間の記録などのデータを有する場合や事業者の現認により当該労働者の労働時間を把握できる場合にもかかわらず、自己申告による把握のみにより把握することは認められない。
<<Question>>
専門型・企画型において、健康・福祉確保措置のうち、把握した労働時間が一定時間を超えない範囲内とすること及び当該時間を超えたときは裁量労働制の対象から外す措置並びに把握した労働時間が一定時間を超える適用対象の労働者への医師の面接指導の措置に規定されている「一定時間」とは具体的に何時間のことか。
<<Answer>>
把握した労働時間が一定時間を超えない範囲内とすること及び当該時間を超えたときは裁量労働制の対象から外す措置を行う場合の「一定時間」の時間数については、長くとも、法第 36 条第6項第2号及び第3号に規定する時間数(※1)を超えない範囲内で設定することが適切である。
また、把握した労働時間が一定時間を超える対象労働者への医師の面接指導の措置を行う場合の「一定時間」の時間数については、安衛法第 66 条の8の委任に基づく安衛則第 52 条の2に規定する時間数(※2)を超えることは認められない。
(※1)時間外・休日労働の時間が月 100 時間未満、2~6か月平均 80 時間以内
(※2)週 40 時間を超える労働時間が月 80 時間
【労使委員会(企画型)】
<<Question>>
企画型において、対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度を変更する場合の労使委員会への説明については、変更の前に行わなければならないのか。
<<Answer>>
対象労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の変更の内容については、事前に説明を行うことが原則であり、また事前に説明を行うことが困難な場合であっても、変更後遅滞なく説明を行うことが適当であることに留意することが必要である。
【その他(専門型・企画型)】
<<Question>>
専門型・企画型において、裁量労働制の適用対象である「労働者に適用される評価制度及びこれに対応する賃金制度の運用状況(労働者への賃金・手当の支給状況や評価結果等をいう。)」を労使協定の当事者となる労働者の過半数で組織する労働組合等又は労使委員会に開示することが適当とされているが、具体的にどのように示せば良いのか。裁量労働制の適用対象である労働者が1名の場合はどのように対応すればよいか。
<<Answer>>
裁量労働制の適用対象である労働者に、実際に支給されている平均賃金を示した資料を開示することや、賃金水準や制度適用に係る特別手当の実際の支給状況や評価結果等について、その分布をまとめた概要資料などを開示することが考えられる。
また、開示する際には、特に裁量労働制の適用対象である労働者が1名の場合は、賃金額等について一定の幅を持たせて開示すること、当該労働者の値が非適用労働者と比べてどの程度多いか若しくは少ないかという相対値を示すこと又は本人の同意を得て上記と同様のものを開示することが考えられるが、開示方法については、労使で協議の上、決定するなど、個人が特定できないようプライバシーの保護に十分留意する必要がある。
【参考】
厚生労働省|令和5年改正労働基準法施行規則等に係る裁量労働制に関するQ&A
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