被用者保険の適用拡大に伴う障害者・長期加入者特例に該当する老齢厚生年金の支給停止に関する経過措置についてご紹介します。
1⃣経過措置の内容
老齢厚生年金を受給している65歳未満の方のうち、障害者(※1)または長期加入者(※2)の特例対象者が厚生年金保険の被保険者になると、年金の定額部分(加給年金額が加算されているときは加給年金額も含みます。)が全額支給停止となります。
(※1)障害の状態(障害厚生年金の1級から3級に該当する障害の程度)にある方
(※2)厚生年金保険の被保険者期間が 44 年(共済組合等の期間は含みません)以上ある方
被用者保険の適用拡大(令和4年10月1日施行)によって厚生年金保険の被保険者となった方が、次の条件のいずれにも該当する場合は、「障害者・長期加入者特例に係る老齢厚生年金在職支給停止一部解除届」を提出することで、年金の定額部分を引き続き受給することができます。
2⃣経過措置の対象となる条件
○ 令和4年9月30日以前から障害者・長期加入者の特例に該当する老齢厚生年金を受給している方。
○ 令和4年9月30日以前から引き続き同一の事業所に使用されており、次の(ア)から(ウ)のいずれかの理由により、令和4年10月1日(施行日)に厚生年金保険に加入された方。
(ア)士業の適用業種追加による資格取得
常時5人以上の従業員を雇用している士業の個人事業所は、令和4年10月から健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所となります。この士業が適用業種へ追加されたことによって、厚生年金保険に加入された方が対象となります。
<適用の対象となる士業>
弁護士、沖縄弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、公証人、司法書士、土地家屋調査士、行政書士、海事代理士、税理士、社会保険労務士、弁理士
(イ)特定適用事業所の企業規模要件の見直しによる資格取得
特定適用事業所で働くパート・アルバイト等の短時間労働者は、一定の要件を満たすことで、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。令和4年10月から特定適用事業所の要件が見直されたことによって、厚生年金保険に加入された短時間労働者の方が対象となります。
<特定適用事業所の要件>
変更前:短時間労働者を除く被保険者の総数が、常時500人を超える事業所
変更後:短時間労働者を除く被保険者の総数が、常時100人を超える事業所
(ウ)短時間労働者の勤務期間要件の撤廃による資格取得
特定適用事業所で働くパート・アルバイト等の短時間労働者は、一定の要件を満たすことで、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。令和4年10月から短時間労働者の勤務期間の要件が撤廃されたことによって、厚生年金保険に加入された短時間労働者の方が対象となります。
<短時間労働者の勤務期間の要件>
変更前:雇用期間が1年以上見込まれること
変更後:雇用期間が2カ月を超えると見込まれること(当初の雇用期間を超えて雇用される場合を含む)
3⃣経過措置による年金の支給
経過措置の対象となる場合、「障害者・長期加入者特例に係る老齢厚生年金在職支給停止一部解除届」をご提出いただくことで、年金の定額部分を引き続き受給することができます。
なお、厚生年金保険の被保険者となることから、年金の報酬比例部分の一部または全部が支給停止される場合があります。(在職老齢年金)
4⃣経過措置に関する事務手続き
「障害者・長期加入者特例に係る老齢厚生年金在職支給停止一部解除届」に必要な事項を記入のうえ、最寄りの年金事務所へご提出ください。(令和4年10月1日以降)
令和4年9月30日以前から引き続いて、同一の事業所に勤務していることの証明があわせて必要となります。
参考:被用者保険の適用拡大に伴う障害者・長期加入者特例に該当する老齢厚生年金の支給停止に関する経過措置
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