これまで、フレックスタイム制、専門業務型裁量労働制についてまとめていますが、今回は1箇月単位の変形労働時間制についてまとめていきます。
(初めての人事労務)フレックスタイム制の基礎知識
(初めての人事労務)専門業務型裁量労働制の基礎知識
1⃣1箇月単位の変形労働時間制とは?
1箇月単位の変形労働時間制は、1箇月以内の一定の期間を平均して1週間の労働時間が法定労働時間を超えない範囲において、当該変形労働時間においては、1日及び1週間の法定労働時間の規制にかかわらず、これを超えて労働させることができる制度です。
1箇月単位の変形労働時間制は、書面による労使協定や就業規則その他これに準ずるもので定めることにより導入することができます。
フレックスタイム制や裁量労働制は必ず労使協定が必要となりますが、1箇月単位の変形労働時間制については就業規則のみでも導入が可能となります。
2⃣1箇月単位の変形労働時間制を導入するには?
1箇月単位の変形労働時間制を採用する場合には、労使協定又は就業規則等により、次の①~④について具体的に定める必要があります。
①変形労働時間制を採用する旨の定め
②労働日、労働時間の特定
変形期間における各日、各週の労働時間をあらかじめ具体的に定めておく必要があります。
各日の労働時間は、単に「労働時間は1日8時間とする」という定め方ではなく、長さのほか、始業および終業の時刻も具体的に定め、かつ、これを労働者に周知することが必要です。
③変形期間の所定労働時間
変形期間の労働時間を平均して1週間の労働時間は法定労働時間を超えないこととされているため、変形期間の所定労働時間の合計は、次の式によって計算された範囲内とすることが必要となります。
1週間の法定労働時間×変形期間の歴日数(1箇月以内)÷7日(1週間)
1箇月の労働時間の総枠は次の表のようになります。
1箇月の歴日数 |
労働時間の総枠 |
小数点2以下切り捨て |
31日 |
177.1時間(194.8時間) |
30日 |
171.4時間(188.5時間) |
29日 |
165.7時間(182.2時間) |
28日 |
160.0時間(176.0時間) |
④変形期間の起算日
変形期間の開始時期を明らかにしておく必要があります。
3⃣労使協定及び就業規則等の手続き
①労使協定
労使協定を締結する場合には、①変形期間と変形期間の起算日、②対象となる労働者の範囲、③変形期間中の各日及び各週の労働時間、④協定の有効期間について協定し、所轄労働基準監督署長に届出を行う必要があります。(ただし、就業規則に規定することでも可能)
②就業規則等
就業規則の作成義務がある事業場(労働者10人以上)については、就業規則に2⃣の①~④について記載し、就業規則を所轄労働基準監督署長に提出する必要があります。
就業規則の作成義務がない事業場(労働者9人以下)については、労使協定を締結するか、就業規則に準じた書面に記載して規程する必要があります。
4⃣割増賃金の計算方法は?
労働時間が法定労働時間を超える場合には、その超える時間について割増賃金を支払うことが必要です。
<時間外労働となる時間>
①1日の法定労働時間外労働
労使協定又は就業規則等で1日8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
(例1)1日の所定労働時間が6時間の日に、所定労働時間を超えて7時間勤務した場合、所定の6時間を超えた1時間は8時間以内の為法定時間外労働とはなりませんが、法定時間内の所定外労働時間となります。
(例2)1日の所定労働時間が9時間の日に、所定労働時間を超えて10時間勤務した場合、所定の9時間を超えた1時間は法定時間外労働となります。
②1週の法定労働時間外労働
労使協定又は就業規則等で1週40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は1週40時間を超えて労働した時間(①の時間外労働時間を除く)
(例3)月~金曜日で所定労働時間39時間の週に、土曜日に4時間勤務した場合、1時間は法定時間内の所定外労働時間、3時間は週40時間を超えるため法定時間外労働となります。
③対象期間の法定労働時間外労働
対象期間の法定労働時間総枠(40時間×対象期間の歴日数÷7日)を超えて労働した時間(①②の時間外労働時間を除く)
(例4)月の所定労働時間が165時間、法定時間の総枠が171.4時間、実労働時間から①②の時間を除いた時間が173時間の場合、法定時間の総枠との差1.6時間が法定時間外労働となります。
(厚生労働省)「1箇月単位の変形労働時間制」導入の手引き
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