【令和4年7月25日更新】令和3年改正育児・介護休業法に関する Q&A

令和4年4月1日以降に順次施行される改正育児・介護休業法について何度か記事でご案内しておりますが(【令和4年4月1日から】育児・介護休業法改正されます~準備はできていますか?~)、この度Q&Aが更新されましたので、いくつかピックアップして記載していきたいと思います。

(参照)令和3年改正育児・介護休業法に関する Q&A (令和4年7月 25 日時点)


(個別の周知・意向確認を行わなければならない対象労働者について)

Q:個別の周知・意向確認措置について、次のような場合は、申出時に周知・意向確認措置義務が課されるのですか。それとも取得可能になった時に周知・意向確認措置義務が課されるのですか。
① 労働者から妊娠の申出があったが、労使協定で除外している入社1年未満の労働者である場合。
② 有期契約労働者から妊娠の申出があったが、雇用契約の更新予定がない場合。
③ 育児休業を取得できないことが明らかな労働者である場合。(入社1年以上経つ時には子が2歳を超える等)

A:いずれの場合も妊娠・出産等の申出があった段階で周知・意向確認の措置の義務が発生するものですが、子の年齢が育児休業の対象年齢を既に超えている場合等、今後育児休業を取得する可能性がない場合については、育児休業の制度の対象とはならない旨の説明を行えば足ります。
①②のように当該労働者にとって後に育児休業申出が可能になる可能性があるケースについては、個別の周知の措置は通常どおり行う必要がありますが、意向確認の措置については、その時点では当該労働者は育児休業申出が可能でないことから、措置を実施する必要はありません。


(個別の周知・意向確認の実施について)

Q:個別の周知・意向確認の措置について、印刷可能な書面データをイントラネット環境に保管しておき、妊娠・出産等をした者はそれを確認するようにあらかじめ通達等で社内周知しておく、という方法でも書面による措置として認められるのでしょうか。

A:法第 21 条第1項では、妊娠・出産等の事実を申し出た労働者に対して、事業主が、個別に、育児休業等に関する制度の周知を行い、また、その申出に係る意向確認を行うことが義務付けられておりますので、お尋ねのように、あらかじめ広く社内周知を行い、妊娠等の申出をした労働者が自らその書面等を確認するといった方法では、法第 21 条第1項の事業主の義務を履行したことにはなりません。

Q:個別の周知・意向確認の措置については、取得を控えさせるような形で実施することは認められていませんが、具体的にどういった場合が取得を控えさせるような形に該当しますか。

A:取得を控えさせるような形での措置の実施としては、例えば、取得の前例がないことをことさらに強調することなどが考えられます。なお、取得の申出をしないように威圧する、申し出た場合の不利益をほのめかすといった、職場における育児休業等に関するハラスメントに該当する様態も含まれます。
また、仮に一度取得を控えさせるような言動があった後に、個別の周知、意向確認の措置が改めて行われた場合であっても、既に行われた取得を控えさせるような言動を含め、実施された措置全体として取得を控えさせる効果を持つ場合には、措置を実施したものとは認められません。


(雇用環境整備の措置の実施について)

Q:法第 22 条第1項の雇用環境の整備等の措置のうち、第1号の「育児休業に係る研修の実施」について、
① オンラインでの研修の実施は可能でしょうか。
② 厚生労働省のホームページに掲載されている育児休業に関する資料の会社掲示板への掲載、配付でも雇用環境の整備の措置を実施したものとして認められますか。

A:① 動画によるオンライン研修とすることも可能ですが、事業主の責任において、受講管理を行うこと等により、労働者が研修を受講していることを担保することが必要です。
② 研修とは、一般に「知識等を高めるために、ある期間特別に勉強をすること。また、そのために行われる講習のこと」を意味しますので、単に資料や動画の会社掲示板への掲載や配付のみでは、研修を実施したこととはなりません。

Q:法第 22 条第1項の雇用環境の整備等の措置のうち、第2号の「育児休業に関する相談体制の整備」について、既に育児休業に関する相談窓口がある場合は、新たに整備をすることなく、同号の措置を講じたものとすることはできますか。

A:法第 22 条第1項第2号の整備に関する要件は次のとおりですので、これを満たす相談体制であれば新たに整備することなく同号の要件を満たすものとなります。具体的には、
・ 相談体制の窓口の設置や相談対応者を置き、これを周知すること。
・ このことは窓口を形式的に設けるだけでは足らず、実質的な対応が可能な窓口が設けられていることをいうものであり、労働者に対する窓口の周知等により、労働者が利用しやすい体制を整備しておくことが必要です。

Q:同じく「育児休業に関する相談体制の整備」について、相談を受け付けるためのメールアドレスや URL を定めて労働者に周知を行っている場合は、相談体制の整備を行っているものとして認められますか。

A:実質的な対応が可能な窓口が設けられていれば、その存在をメールアドレス等の方法で労働者に周知を行うことは差し支えありません。

Q:法第 22 条第1項の雇用環境の整備等の措置のうち、
① 雇用する労働者の育児休業の取得に関する事例の収集・提供は、1度だけ行えばよいものでしょうか。
② また、育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する方針の周知についても、1度だけ行えばよいものでしょうか。

A:① 法第 22 条は、育児休業申出等が円滑に行われるようにするため、事業主に雇用環境の整備に関する措置を義務付けているものです。育児休業に関する制度は時間の経過とともに、法令改正等(あるいは事業主独自の取組がある場合はその制度の改変等)が行われることにより取得時の制度等が変化していくこともあるため、社内の制度改正状況や、法令改正の状況も踏まえ、定期的に育児休業の取得に関する事例の更新を行い、閲覧した労働者が育児休業申出の参考となる事例にする必要があります。
② 育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する方針についても、社内制度や法令の改正の状況、社内での認知状況等を踏まえ、定期的な周知の実施が必要です。

Q:育児期の社員がおらず、また、採用する予定もない場合でも、雇用環境整備をする必要はありますか。

A:育児休業の申出対象となる子には、養子縁組等も含まれていることから、特定の年齢に限らず幅広い年齢の労働者が育児休業申出を行う可能性があります。また、雇用環境の整備の措置を求めている法第 22 条では、義務の対象となる事業主を限定していないことから、全ての事業主が雇用環境の整備をしていただく必要があります。


(出生時育児休業制度に関する改正法の施行前後の取扱いについて)

Q:現行のいわゆる「パパ休暇」(子の出生後8週間以内に父親が育児休業を取得した場合には再度取得可)はどうなりますか。また、現行のいわゆる「パパ・ママ育休プラス」はどうなりますか。

A:現行のいわゆる「パパ休暇」は、今回の改正に伴いなくなり、出生時育児休業と、育児休業の分割取得化に見直されることとなります。なお、現行のいわゆる「パパ・ママ育休プラス」は引き続き利用できます。


(出生時育児休業申出・期間について)

Q:出生時育児休業を2回に分割して取得する場合は、その都度申し出ればよいですか。

A:出生時育児休業を2回に分割して取得する場合は、初回の出生時育児休業の申出の際にまとめて申し出ることが原則であり、まとめて申し出ない場合(1回目の出生時育児休業の申出をした後日に2回目の申出をする場合)には、事業主は2回目以降の出生時育児休業に係る申出を拒むことができます。なお、事業主はこれを拒まないことも可能ですので、この場合は法第9条の2に規定する法定の出生時育児休業を取得することとなります。


(出生時育児休業期間の年次有給休暇の付与に係る出勤率算定)

Q:出生時育児休業は、年次有給休暇の付与に係る出勤率算定に当たって、出勤したものとみなされますか。また、出生時育児休業中に部分就業を行う予定であった日について、欠勤した場合や子の看護休暇等の年休の出勤率算定に含まれない休暇を取得した場合についてはどのようにみなされますか。

A:出生時育児休業は法第2条第1号に規定する育児休業に含まれるため、出生時育児休業をした期間についても、育児休業をした期間と同様に出勤率の算定に当たり出勤したものとみなされます。
また、出生時育児休業中に部分就業を行う予定であった日について、欠勤した場合や子の看護休暇等の年次有給休暇の付与に係る出勤率算定に当たり出勤したものとみなされない休暇を取得した場合であっても、その日については出生時育児休業期間中であることから、出勤したものとみなされます。


(出生時育児休業中の就業申出について)

Q:出生時育児休業中に就業する場合、契約上の勤務時間以外の時間を労働者が申し出てもよいのですか。(勤務時間外の夜間の2時間でテレワークであれば勤務可能など。)

A:出生時育児休業中の就業可能な時間帯等の申出は、所定労働時間内の時間帯に限って行うことができますので、所定労働時間外の時間帯について、労働者は就業の申出を行うことはできません。

Q:出生時育児休業中に就業させることができる者について労使協定で定める際、
・「休業開始日の○週間前までに就業可能日を申し出た労働者に限る」といった形で対象労働者の範囲を規定することや、
・1日勤務できる者(所定労働時間より短い勤務は認めないなど)、特定の職種や業務(営業職は可だが事務職は不可、会議出席の場合のみ可など)、特定の場所(A 店は可だが B 店は不可、テレワークは不可など)で勤務できる者、繁忙期等の時期に取得する者等に限定することは可能ですか。

A:ご指摘のような形で対象労働者の範囲を定めることは可能です。

Q:出生時育休中の部分就業の上限について、「就業日における労働時間の合計が、出生時育児休業期間における所定労働時間の合計の2分の1以下であること」とありますが、直前まで育児短時間勤務をしている場合等は1日の所定労働時間は6時間になるのですか。それとも出生時育児休業の開始により短時間勤務が終了となり、通常の勤務時間で計算するのでしょうか。

A:申出を行った期間について、労働者の労務提供義務の消滅する育児休業と、労務提供義務が存在することを前提とする所定労働時間の短縮の措置は両立しないため、出生時育児休業期間中については、所定労働時間の短縮措置の対象となりません。したがって、出生時育休中の部分就業の上限時間は、短縮前の労働時間をもとに計算します。


(出生時育休中の部分就業についての休業手当の取扱い)

Q:出生時育休中の部分就業を行う日が、使用者の事情による休業となった場合について、会社は休業手当を支給する義務がありますか。

A:出生時育休中の部分就業であっても、就業日について使用者の責めに帰すべき事由による休業となった場合は、休業手当の支払いが必要となります。



このエントリーをはてなブックマークに追加  
この記事を書いた
Athrunとは?