(初めての人事労務)意外と奥深い?賞与計算の注意ポイント

6月、7月といえば夏季賞与の時期ですね。

今回は、簡単なようで意外と奥深い、賞与計算の注意すべきポイントについてご紹介していきます。


<社会保険料の計算>

1⃣標準賞与額とは?

年3回以下支払われる賞与について、1,000円未満を切り捨てた額を「標準賞与額」といい、毎月の給与と同率の保険料を計算し納めます。この標準賞与額には、健康保険・厚生年金保険でそれぞれ上限額が設定されています。

  標準賞与額の上限
健康保険 年度(保険者単位で4月1日から翌年3月31日まで)の累計額で573万円
厚生年金保険 支給1ヵ月(同一月内につき2回以上支給されたときは合算)150万円

給与計算で社会保険料を翌月控除の場合、保険料率は前月のもので計算しますが、賞与計算では支給月の保険料率が適用される点が、給与計算と異なります。

例えば3月に保険料率が改定され、3月に決算賞与が支給する場合、3月の賞与計算では改定された保険料率にて社会保険料を計算する必要があるため、注意が必要です。(給与計算では4月支給分より料率改定)

2⃣退職者、産休・育休者の社会保険料の計算

月末退職であれば、社会保険料の徴収を行う必要がありますが、月途中退職であれば徴収の必要がありません。退職情報を事前に把握しておけば問題ありませんが、支給後に急遽退職となった場合などは、退職後に社会保険料を返還しなければならないケースもありますので、注意が必要です。

また、産休・育休中の方に賞与を支払う場合は基本的には免除となりますが、月末時点で復職していれば社会保険料の徴収を行う必要があります(※2022年6月時点)ので、退職情報と同様に、いつ復職予定なのかを把握しておく必要があります。
(※2022年10月以降の賞与に係る社会保険料免除要件についてはこちら⇒「育児休業等中の賞与にかかる保険料免除について」)

3⃣介護保険料の計算

介護保険料は、給与計算と同様に40歳の誕生日の前日の属する月から健康保険料と一緒に徴収します。

例えば、誕生日が7月1日で、40歳を迎えた場合、6月に支払う賞与計算では介護保険料を徴収する必要があります。しかし、給与計算では翌月徴収となっているため、6月に支払う給与からは徴収せず、7月に支払う給与から介護保険料を徴収開始となります。
給与では徴収していないのに賞与で徴収しているのはなぜだろう?と疑問に思うことがあるかもしれませんが、そんな時は40歳の誕生日を迎えたのか確認してみてください。

4⃣月2回賞与支給があった場合の社会保険料の計算と届出

例えば、給与でインセンティブなど賞与扱いとする手当を支払い、同じ月に別途賞与支給を行う場合など、月に2回賞与計算を行うケースがあります。

その場合、同月に支給される賞与金額を合算して、社会保険料を計算します。別々に計算してしまうと、端数が合わなくなってしまう可能性がありますので、注意が必要です。

また同一月内に2回以上賞与を支払った場合は、その月の最後に支払った日を賞与支払年月日として合算した賞与額を一括で届出ることが可能です。


<賞与に対する源泉徴収の計算>

賞与に対する源泉徴収(所得税)の計算は、通常給与計算ソフトで自動的に正しく計算されるはずですが、給与に対する源泉徴収の計算方法と異なることを認識しておく必要があります。

1⃣通常の場合

(1) 前月の給与から社会保険料等を差し引きます。
(2) 上記(1)の金額と扶養親族等の数を「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめて税率(賞与の金額に乗ずべき率)を求めます。
(3) (賞与から社会保険料等を差し引いた金額)×上記(2)の税率

この金額が、賞与から源泉徴収する税額になります。

2⃣前月の給与支給が0円だった場合

上記1⃣のとおり通常賞与に対する源泉徴収は、前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額と扶養親族等の数をもとに決定されますが、休職している場合などで前月の給与支給が0円だった場合、同様に計算するといくら賞与額が高くても源泉徴収が0円となってしまいます。

前月の給与支給が0円だった場合は、以下のとおり源泉徴収税額を計算します。

(1)(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6
(2)(1)の金額を「月額表」に当てはめて税額を求める。
(3)(2)×6

この金額が賞与から源泉徴収する税額になります。
(注) 賞与の計算期間が半年を超える場合には、賞与から社会保険料等を差し引いた金額を12で除して、同じ方法で計算します。そして、求めた金額を12倍したものが源泉徴収する税額になります。

3⃣前月の給与の金額(社会保険料等を差し引いた金額)の10倍を超える賞与(社会保険料等を差し引いた金額)を支払う場合

賞与額(社会保険料等を差し引いた金額)が前月の給与額(社会保険料等を差し引いた金額)の10倍を超える場合も、通常の計算とは異なる方法で源泉徴収税額を計算します。

(1)(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6
(2)(1)+(前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額)
(3)(2)の金額を「月額表」に当てはめて税額を求める。
(4)(3)-(前月の給与に対する源泉徴収税額)
(5)(4)×6

この金額が賞与から源泉徴収する税額になります。

(注) 賞与の計算期間が半年を超える場合には、賞与から社会保険料等を差し引いた金額を12で除して、同じ方法で計算します。そして、求めた金額を12倍したものが源泉徴収する税額になります。


給与計算ソフトで正しく計算を行えたとしても、システム設定や登録誤り、また休職や退職情報を正しく把握しておかないと、計算ミスにつながる恐れがあります。

計算方法を理解しておくと、計算ミスや少しの違和感に気が付くことができるので、チェックポイントをまとめたリストなどを作成して、正しく賞与計算を行いましょう!

 



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