令和4年度より、人材開発関係の助成金に新たに「人への投資促進コース」が設けられました。
<目的>
高度デジタル人材等の育成のための訓練、IT 分野の未経験者を即戦力化するための訓練、定額制サービス(サブスクリプション)による訓練を実施した場合、労働者が自発的に受講した訓練費用を事業主が負担した場合、長期教育訓練休暇等制度を導入し、労働者が当該休暇等を取得して訓練を受けた場合に助成をすることにより、企業内における人材育成を促進することを目的としています。
<対象となる措置>
本コースは、次の1(1)~(4)に規定する対象訓練を雇用する被保険者に対して実施する事業主、または次の1(5)~(6)の制度を就業規則または労働協約に新たに定めて導入し、雇用する雇用保険被保険者に休暇等の付与を行った事業主が、次の2の要件を満たしたうえで、3により事前に届け出た計画に沿って訓練等を実施した場合に受給することができます。
1.対象訓練および対象制度
(1)定額制訓練
被保険者に1訓練あたりの対象経費が明確でなく、同額で複数の訓練を受けられる e ラーニングで実施される定額制サービスの訓練等を受けさせること
(2)自発的職業能力開発訓練
① 一般労働者等を対象としたものであること
② 事業主が、自発的職業能力開発経費の2分の1以上の額を負担するものであること
③ ②の額について、自発的職業能力開発を行った被保険者に対して、事業主が通貨により直接に当該被保険者に支払うものであること(事業主が直接訓練機関に受講料等を支払う場合を除く)
④ 制度を規定した就業規則又は労働協約を、制度施行日までに雇用する労働者に周知し、就業規則については制度施行日までに管轄する監督署等へ提出したものであること(常時 10 人未満の労働者を使用する事業主の場合、制度施行日までに事業主と労働組合等の労働者代表者による申立書を作成することでも可)。また、労働協約については制度施行日までに締結されたものである
⑤ 被保険者が自発的職業能力開発として、訓練等を受講できるものであること
(3)高度デジタル人材等訓練
被保険者に次の①または②のいずれかの訓練等を受けさせること
① 高度デジタル人材訓練
ITSS レベル4または3となる訓練等を受けさせること、または大学(情報科学・情報工学など)へ入学させて訓練等を受けさせること
② 成長分野等人材訓練
大学院(海外の大学院を含む)の正規課程、科目等履修制度、履修証明プログラムを受けさせること
(4)情報技術分野認定実習併用職業訓練
事業主が、要件を満たす15歳以上45歳未満で、情報処・理通信技術者の職種に関連する業務経験がない被保険者に受けさせる実習併用職業訓練の実施計画について、厚生労働大臣の認定を受けて実施すること
(5)長期教育訓練休暇制度
次の①~⑥のいずれにも該当するものであること
① 一般労働者等を対象とした長期教育訓練休暇制度であること
② 所定労働日において30日以上の長期教育訓練休暇の取得が可能な長期教育訓練休暇制度を就業規則または労働協約に制度施行日を明記して規定するものであること
③ 教育訓練休暇の取得については、日単位での取得のみとするものであること
④ 制度を規定した就業規則または労働協約を、制度施行日までに雇用する労働者に周知し、就業規則については制度施行日までに管轄する労働基準監督署に提出したものであること(常時10人未満の労働者を使用する事業主の場合、制度施行日までに事業主と労働者代表者による申立書を作成することでも可)、労働協約については、制度施行日までに締結されたものであること
⑤ 労働者が業務命令でなく、自発的に教育訓練または職業訓練のいずれかを受講すること。これに加えて、各種検定またはキャリアコンサルティングを受講することは差し支えありません。
⑥ 連続して取得した休暇期間ごとに、職業訓練および教育訓練を受けた日数(職業訓練または教育訓練を開始した日から職業訓練または教育訓練を修了した日までの日数(一つの長期教育訓練休暇期間中に複数の職業訓練および教育訓練を受けた場合は、その通算した期間における日数とする))および各種検定またはキャリアコンサルティングの実施日数(職業訓練、教育訓練、各種検定またはキャリアコンサルティングが同日に実施された場合は重複計上しないものとする)が、長期教育訓練休暇の取得日数の2分の1以上に相当するものであること
(6)教育訓練短時間勤務等制度
次の①~⑥のいずれにも該当するものであること
① 一般労働者等を対象とした教育訓練短時間勤務等制度であること
② 所定労働日において30回(1日に複数回利用した場合は1回とみなす)以上の所定労働時間の短縮および所定外労働時間の免除のいずれも利用することが可能な教育訓練短時間勤等制度を就業規則または労働協約に当該制度の施行日を明記して規定するものであること
③ 所定労働時間の短縮は、1日につき1時間以上所定労働時間未満の範囲で1時間単位で措置できるものであること
④ 教育訓練短時間勤務制度を利用し受講する教育訓練等については、同一の教育訓練機関が行う一連の15回以上の訓練を含むこと
⑤ 制度を規定した就業規則または労働協約を、制度施行日までに雇用する労働者に周知し、就業規則については制度施行日までに管轄する労働基準監督署に提出したものであること(常時10人未満の労働者を使用する事業主の場合、制度施行日までに事業主と労働者代表者による申立書を作成することでも可)、労働協約については、制度施行日までに締結されたものであること
⑥ 労働者が業務命令でなく、自発的に教育訓練または職業訓練いずれかを受講すること
2.事業内職業能力開発計画、年間職業能力開発計画の作成・提出および職業能力開発推進者の選任
事前に事業内職業能力開発計画を作成し、1の(1)~(4)の場合は、次の(1)および(2)の要件を満たしたうえで年間職業能力開発計画を作成し、また、1の(5)または(6)の場合は、次の(3)または(4)の要件を満たしたうえで制度導入・適用計画届を作成し、管轄の労働局に提出すること。また、職業能力開発推進者を選任していること
(1)職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための訓練であること
(2)1コースの OFF-JT 訓練時間が10時間以上であること
(3)各都道府県労働局が受理した長期教育訓練休暇制度導入・適用計画に基づき長期教育訓練休暇制度を新たに導入し、その制度を雇用する被保険者に適用した事業主であること
(4)各都道府県労働局が受理した教育訓練短時間勤務等制度導入・適用計画に基づき教育訓練短時間勤務等制度を新たに導入し、その制度を雇用する被保険者に適用した事業主であること
3.訓練・制度の実施
(1)提出した年間職業能力開発計画に基づき、対象労働者に訓練を実施すること
(2)長期教育訓練休暇制度導入・適用計画期間(制度導入日から3年間)内に、新たに導入した長期教育訓練休暇制度に基づき、被保険者の所定労働日において30日以上の長期教育訓練休暇を付与し、実際に休暇を取得させたこと
(3)教育訓練短時間勤務等制度導入・適用計画期間(制度導入日から3年間)内に、被保険者の所定労働日において30回以上(1日に複数回利用した場合は1回とみなす)の教育訓練短時間勤務等制度を適用し、実際に所定労働時間の短縮措置および所定外労働時間の免除を行った事業主であること
4.生産性向上助成
1の(1)~(4)の訓練を3により実施、または1の(5)、(6)の制度を導入・実施し、助成を受給した事業主が以下の要件を満たした場合に受給することができます。
(1)訓練開始日が属する会計年度、または制度導入後、最初に適用した被保険者の休暇取得開始日が属する会計年度の前年度とその3年度後の会計年度の生産性と比べて6%以上伸びていること
(2)生産性向上助成の対象となる事業所において、生産性要件の伸び率を算定する期間(訓練開始日が属する会計年度、または制度導入後、最初に適用した被保険者の休暇取得開始日が属する会計年度の前年度の初日からその3年度後の会計年度の末日までの期間)について、雇用する雇用保険法第4条に規定する被保険者(雇用保険法第38条第1項に規定する「短期雇用特例被保険者」および同法第43条第1項に規定する「日雇労働被保険者」を除く)を事業主都合で解雇等(退職勧奨を含む)していないこと。
<支給額>
1.人への投資促進コースの助成金は、下表の額が支給されます。
訓練区分 |
経費助成 |
賃金助成(1人1時間あたり) |
OJT 実施助成(1人1コースあたり) |
定額制訓練 |
45%〔30%〕
<60%〔45%〕> |
- |
- |
自発的職業能力開発訓練
|
30%
<45%> |
- |
- |
高度デジタル人材訓練 |
75%〔60%〕 |
960円〔480円〕 |
- |
成長分野等人材訓練 |
75% |
国内大学院
960円 |
- |
情報技術分野認定実習併用職業訓練 |
60%〔45%〕
<75%〔60%〕> |
760円〔380円〕
<960円〔480円〕> |
20万円〔11万円〕
25万円〔14万円〕 |
長期教育訓練休暇制度 |
制度導入経費20万円
<24万円> |
1日あたり6,000円
<7,200円> |
- |
教育訓練短時間勤務等制度 |
制度導入経費20万円
<24万円> |
- |
- |
注 〔 〕内は中小企業以外の場合、< >内は生産性向上助成が適用された場合
2.賃金助成の支給限度額は1人1訓練あたり1,200時間です。大学院、大学または専門実践教育訓練の場合は1,600時間です。長期教育訓練休暇制度については最大150日です。
3.経費助成の支給限度額は、実訓練時間数に応じて下表のとおりです。
訓練区分 |
100時間未満 |
100時間~
200時間未満
|
200時間以上 |
大学(一年度あたり)
|
大学院(一年度あたり)
|
自発的職業能力開発訓練 |
7万円 |
15万円 |
20万円 |
60万円 |
国内60万円
海外200万円 |
高度デジタル人材訓練 |
30万円
〔20万円〕 |
40万円
〔25万円〕 |
50万円
〔30万円〕
|
150万円
〔100万円〕 |
- |
成長分野等人材訓練 |
- |
- |
- |
- |
国内150万円
海外500万円 |
情報技術分野認定実習併用職業訓練 |
15万円
〔10万円〕 |
30万円
〔20万円〕 |
50万円
〔30万円〕 |
- |
- |
注 〔 〕内は中小企業以外の場合
4.受講回数の上限は、自発的職業能力開発訓練、高度デジタル人材訓練および成長分野等人材訓練の場合は1労働者につき年間職業能力開発計画期間の1年間で3回まで、情報技術分野認定実習併用職業訓練の場合は1労働者につき年間職業能力開発計画期間の1年間で1回までです。定額制訓練については、同時期に複数のサービスと契約する場合は、一の契約のみ助成の対象となります。
また、長期教育訓練休暇制度及び教育訓練短時間勤務等制度については、制度導入助成は1事業主1回まで、賃金助成は1人1年150日までです。
5.1年度中に受給できる助成額は、成長分野等人材訓練を除き人への投資促進コースで1,500万円まで、そのうち自発的職業能力開発訓練は200万円までです。また、成長分野等人材訓練は1,000万円までです。
(参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000763045.pdf
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