令和3年2月26日に「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案」が提出され、その概要が公表されましたが、その後、令和3年6月9日に改正育児・介護休業法が公布されました。
施行は令和4年4月1日以降に予定されておりますが、実務手続きにも関係するところですので、ポイントを抑えておきましょう。
1⃣改正の趣旨
出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにするため、子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設、育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け、育児休業給付に関する所要の規定の整備等の措置を講ずる。
2⃣改正の概要
1.男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設 【育児・介護休業法】
子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる柔軟な育児休業の枠組みを創設。
①休業の申出期限については、原則休業の2週間前まで。※現行の育児休業(1か月前)よりも短縮
②分割して取得できる回数は2回。※現行は分割不可
③労使協定を締結している場合に、労働者と事業主の個別合意により、事前に調整した上で休業中に就業することが可能。
※現行の「パパ休暇」では、産後8週間以内に一度育児休業を取得し、8週間以内に育児休業を終了した場合、特別な事情がなくても再度育児休業が取得できるようになっていますが、今回の改正では、さらに産後8週間以内に分割して育児休業が取得できることとなりました。
2.育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け
①育児休業の申出・取得を円滑にするための雇用環境の整備に関する措置
②妊娠・出産(本人又は配偶者)の申出をした労働者に対して事業主から個別の制度周知及び休業の取得意向の確認のための措置
を講ずることを事業主に義務付ける。
3.育児休業の分割取得
育児休業(1の休業を除く。)について、分割して2回まで取得することが可能。
※基本的に育児休業の取得は1回までとされているため、お子さんやご家族の状況に応じて分割して取得可能になるメリットは大きいですね。
4.育児休業の取得の状況の公表の義務付け
常時雇用する労働者数が1,000人超の事業主に対し、育児休業の取得の状況について公表を義務付ける。
5.有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
有期雇用労働者の育児休業及び介護休業の取得要件のうち「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」であることという要件を廃止する。
ただし、労使協定を締結した場合には、無期雇用労働者と同様に、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外することを可能とする。
※現行の制度では、有期雇用労働者が入社後1年未満に育児休業を取得しようとした場合、会社が認めることはできましたが、育児介護休業法上の育児休業には該当しないため、育児休業給付金の対象とはなりませんでした。(6にて、今後の雇用保険法での取り扱いをまとめています)
労使協定を締結するかどうかによりますが、有期雇用労働者にとっても育児休業が取得しやすい環境になります。
6.育児休業給付に関する所要の規定の整備 【雇用保険法】
①1及び3の改正を踏まえ、育児休業給付についても所要の規定を整備する。
②出産日のタイミングによって受給要件を満たさなくなるケースを解消するため、被保険者期間の計算の起算点に関する特例を設ける。
3⃣施行期日
・2、5:令和4年4月1日
・1、3、6:公布日から1年6月を超えない範囲内で政令で定める日(ただし、6②については公布日から3月を超えない範囲内で政令で定める日)
・4:令和5年4月1日
改正によって、これまでとは従業員の働き方や休み方が変わってきます。
社内の手続きとしては、就業規則の変更、社員への周知も必要となりますし、新制度が育児休業給付(給付率:180日間までは67%)の対象となるよう、雇用保険法上の手当も行われる予定となっていますので、社会保険・雇用保険ともに手続きの流れも確認が必要です。
令和4年4月1日から段階的に施行となりますので、どのタイミングでどのような制度が活用できて、どんな手続きが必要なのか、新たな情報が出次第、情報を更新していきたいと思います!
(参考)「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の概要」
(参考)リーフレット「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
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