育児・介護休業法上の育児休業は、子の養育を行うために、休業期間中の労務提供義務を消滅させる制度であり、育児休業中に就労することは本来想定されていませんが、実際には臨時的に就労を依頼され、従業員が応じて就労を行うということもあるかと思います。
その場合、育児休業は継続できるのか、育児休業給付金は支払われるのかについて説明していきます。
1⃣育児休業中に就労しても、育児休業が継続していることになるのか?
育児休業中の就労がどのような場合に育児休業とみなされるのかという判断は、以下のとおりとなります。
<育児休業とみなされる場合>
労使の話し合いにより、子の養育をする必要がない期間に限り、一時的・臨時的にその事業主の下で就労する場合(就労が月10日、又は80時間以下)
(事例)
① 育児休業開始当初は、労働者Aは育児休業期間中に出勤することを予定していなかったが、自社製品の需要が予期せず増大し、一定の習熟が必要な作業の業務量が急激に増加したため、スキル習得のための数日間の研修を行う講師業務を事業主が依頼し、Aが合意した場合
② 労働者Bの育児休業期間中に、限られた少数の社員にしか情報が共有されていない機密性の高い事項に関わるトラブルが発生したため、当該事項の詳細や経緯を知っているBに、一時的なトラブル対応を事業主が依頼し、Bが合意した場合
<育児休業とみなされない場合>
短時間であっても、恒常的・定期的に就労させる場合
(事例)
労働者Fが育児休業開始当初より、あらかじめ決められた1日4時間で月20日間勤務する場合や、毎週特定の曜日または時間に勤務する場合
2⃣育児休業中に就労した場合、育児休業給付金は受給できるのか?
上記の<育児休業とみなされる場合>に該当する場合は、育児休業給付金も引き続き受給することができます。
ただし、育児休業期間中に支払われる賃金により、給付金が減額もしくは支給されない場合があります。
<原則>
賃金月額(休業開始時賃金日額×支給日数)×67%(育児休業開始から6か月経過後は50%)
<賃金が賃金月額の13%(6か月経過後は30%)以下の場合>
減額なし
<賃金が賃金月額の13%(6か月経過後は30%)を超えて80%未満の場合>
[賃金月額×80%]と賃金の差額が支給(減額支給)
<賃金が賃金月額の80%以上の場合>
支給なし
※ 育児休業給付金の支給を受けるには、一定の要件を満たす必要があります。
※ 労働者が自ら事業主の求めに応じ、合意することが必要です。(事業主の一方的な指示により就労させることはできません。)
※ 事業主は、育児休業中に就労しなかったことを理由として、不利益な取り扱い(人事考課において不利益な評価をするなど)を行ってはなりません。また、上司や同僚からのハラスメントが起きないように、雇用管理上必要な措置を講ずる必要があります。
(参考URL)https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000706037.pdf
この記事を書いた