東京労働局より、管下18労働基準監督署における2023(令和5年)の申告事案の概要が公表されました。
◆申告とは
最低労働基準を定めた労働基準法などに違反するとして労働者が労働基準監督署に救済を求めるものであり、労働基準監督署では、労働者の置かれた状況に意を払い、懇切・丁寧な対応に留意しつつ、迅速・的確に処理を行っています。
◆申告事案の概要
①申告受理件数: 4,002件(前年比825件増) :2022年に引き続き、2年連続で増加
直近10年間における申告受理件数の推移を見ると、2020年までは長期的に緩やかな減少傾向を示していましたが、2021年に大きく減少しました。 その後、2022年・2023年は増加に転じました。
申告受理件数を内容別にみると、賃金不払が3,094件(前年比27.7%増)で最も多く、その業種別の内訳は、接客娯楽業(18.6%)、商業(17.3%)、保健衛生業(10.0%)の順となっています。 次いで多いのは、解雇が498件(前年比29.7%増)となっており、その業種別の内訳は、商業(23.1%)、接客娯楽業(20.5%)、保健衛生業(8.0%)の順となっています。
② 申告内容(申告内容別の件数:4,508件) :賃金不払及び解雇の申告件数が増加
⑴ 賃金不払: 3,094件(前年比671件増)
⑵ 解雇 : 498件(前年比114件増)
⑶ 労働時間: 68件(前年比2件増)
※労働者が複数の事項を重複して申告する場合があるため、申告内容別の件数の合計は申告受理件数と一致しません。
◆申告による監督指導事例
監査指導事例がまとめられていましたので、ご紹介します。
定期賃金不払:
退職した労働者から、15分未満の労働時間を切り捨てて賃金が計算されていたという申告を受け、調査したところ、事実であることが判明したため、是正勧告を行い、不払いの全額が支給された。(商業)
割増賃金不払:
退職した労働者から、割増賃金の支給額が法定を下回っているという申告を受け、調査したところ、深夜労働に対する割増賃金は支給されていたが、時間外労働に対する割増賃金が支払われていなかった事実が判明したため、是正勧告を行い、不払いの全額が支給された。(接客娯楽業)
解雇:
解雇された労働者から、30日に満たない予告日数で解雇されたにもかかわらず、30日に満たない予告日数分の平均賃金が解雇予告手当として支払われなかったという申告を受け、調査したところ、事実であることが判明したため、是正勧告を行い、不払いの全額が支給された。(保健衛生業)
労働時間:
在職中の労働者から、36協定で締結した範囲を超えて時間外労働を行わせているという申告を受け、調査したところ、実際に協定時間を超える時間外労働が認められたため、是正勧告を行い、36協定の範囲内に収まるまで時間外労働が削減された。(警備業)
【参考URL】
東京労働局|東京都内の労働基準監督署における令和5年の申告事案の概要
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